音楽産業全体の在り方を
考えなければならない
ライブを行うには小規模なものでも最低3カ月は準備に要します。大規模なものになると1年前には会場を押さえて、時間をかけてチケット販売やステージづくりの手配を行います。
現時点で政府は「8月1日をめどに、以降は人数の上限なしで収容率50%のお客さんを入れていいですよ」というガイドラインしか出していません(編集部注・取材時の7月3日時点。第36回新型コロナウイルス感染症対策本部の配布資料)。9月以降、どういうガイドラインになってくるかによってまた状況が変わってくるので、各社とも、ライブの規模と状況を見ながら再開のタイミングを計っている状態ですね。
われわれも、アリーナクラスでも50%しかお客さんが入れない場合、それを1日2回やれば、50+50で100になるが果たして採算は取れるのか等、検証はしていますが、何が正解か今は分からない状態です。
50を1回にして有料配信することで、会場に来られない人に買っていただき何とか埋めていくという方法もあれば、50でも来たいお客さんは非常にロイヤリティーの高いお客さんでもあったりするので、そこにダイナミックプライシングのような変動価格のチケット制を導入して、需要に合った適切なチケット単価でご購入いただくとか、さまざまな方法があると思います。
賛否両論ありながらも、年末に向けて各社が探り探りライブを行い、政府とも連携しながらひとつの形をつくり上げていくしかないのだと思います。下手をしたらこのままずっと、50%以上のお客さんを入れることができない世の中になってしまう可能性もあるわけです。
気を付けなければいけないことは、ライブを行えば行うほど、アーティストやスタッフを含め、主催者側が赤字になっていくことです。これはやはり経済の理論からすると誰もやらなくなってしまいますよね。そうなると音楽産業自体がシュリンクしていきます。
――アーティストは今、どのような状況ですか?
特にライブ活動を主軸に置いているアーティストは、活動自体が0です。ファンの手前、ネガティブなことばかりを言ってはいられないので、みんなを元気づけようと世の中に対してメッセージを発信したり、Zoom上で音楽を奏でたりと、表現者なのでそういうところは本当にアーティストの皆さん頑張ってくださっています。
アーティストたちも、今まで当たり前だったことが当たり前ではなくなったため、この産業自体をどのようにしていけばいいのか、もちろん個人の力だけでは難しいこともわかっているので、こういうときだからこそ今後のアーティスト活動についてを真剣に考え、会社やマネージャーときちんと話し合う機会が増えました。そういった意味では難局ではありますが、アーティストとの絆はより深まっていますね。
一方でアーティストと一緒にツアーを回ることで生計を立てているバンドのメンバーやスタッフも、やはり仕事がまったくなくなるわけです。withコロナとかafterコロナとかって言いますが、結局「ライブをもうやってもいいですよ」「100でやっていいですよ」という世の中に戻ったとき、ライブをやれるスタッフがいなくなっていたり、お客さんがライブに戻ってこなかったりすることが、一番怖いなと思いますね。そうなると音楽産業は低迷してしまいます。これは今、世界中の音楽産業で問題となっていることです。
アーティストにとっても、こうした人たちに支えられて自らの活動が成り立っているわけですから、非常に危機感を持っています。
――コロナ禍では、アーティストは創作期間に充てることができるかもしれませんが、フリーランスの多い音楽業界の緊急の問題は「音楽業界を裏で支えている人たちをどのように救うか」という点が大きいように感じています。
もちろん大きいです。皆さん今、貯金を切り崩したり、助成金に頼ったりしながら、何とか食いつないでいます。しかしこの先1年何もできない状況が続くのであれば、本当に産業全体の在り方を考えなければいけません。コロナ禍の影響があとどのくらい続くのかによって、その後の流れはまったく変わってくるので、本当に今は何とも言えないというか。
外資系のプラットフォーマーと
渡り合わなければならない
――5月の役員人事で松浦勝人氏がCEOを離れて会長になられ、黒岩代表が新たにCEOに就きました。松浦氏がCEOから離れたことの影響はありますか?
Photo by T.H.
会長の松浦は、今後さらに音楽制作などクリエイティブの方に力を入れていくところです。つくっていく強み、そうした原点をしっかり取り戻そうという意味でも、(エイベックスは)より一層、クリエイティブに力を入れていく方向にかじを切りました。そのため、松浦がCEOを離れたことが大きく影響しているとか、それによって何かが変わるとか、そういった認識はありません。
中国系を含め、特に外資系のプラットフォーマーがグローバルに展開している中で、やはりわれわれにコンテンツがないと一緒に展開ができないんですよね。そのためまずはコンテンツやIP(知的財産)というところにプライオリティを持つ必要があるということです。もちろん経営に関しては、3人の代表を中心に、執行役員メンバーと一緒に導いていきます。







