――クリエイティブを優先するということは、エイベックスは今後はもうプラットフォーム事業は行わないのでしょうか?

 プラットフォーム事業を行わないかといったら、そんなことはありません。ただ、やはり私たちの中に「クリエイティブを大事にしたい」という強い想いがあります。海外のプラットフォーマーや、テレビもプラットフォームだと思いますが、そういった事業者と一緒に組んで、どのようにコンテンツやIPを世の中に出していくか、何よりそこを中心に考えています。

 プラットフォーム事業には、どんどん規模を拡大してマーケットを広げていく「マネーゲーム」のような側面もあります。私たちがどちらを行いたいかというと、やはりマネーゲームよりもクリエイティブ。作品をつくるというところに力を入れたい。クリエイティブに強いというアイディンティティーがなければ、巨大なプラットフォーマーとの協業において、良い関係性を築くことができない。そのことは最近とても感じています。

――松浦氏がCEOを退任してクリエイティブに専念していくのであれば、むしろそこの強化につながる、と。

 もちろんそうです。プラットフォーム側の考えが優勢になっていくと、ものをつくれない会社になっていきます。

 企業というものは大きくなるほど「機能」を充実させたくなります。そういう意味ではプラットフォームもひとつの機能といえます。もちろん機能も非常に重要です。ただ、機能を強化してもそこに乗せるコンテンツをつくることができなければ、エイベックスという会社は存在意義がなくなってしまいます。

 ヒットの原石がつくれなくなること、クリエイティブでなくなること、それが会社にとっては一番の致命傷なのです。

 ファンクラブの運営もある意味プラットフォームですし、ライブのチケット販売の仕組みもプラットフォームといえます。クリエイティブ重視のアイディンティティーを持った上で、これらのプラットフォームを持つということは、当然ながら今後もあり得ることです。

コロナ禍を機に
世界にキャッチアップする

――コロナ禍で浮き彫りになった音楽産業の一番の弱点はどこでしょうか?

 ライブのようなフィジカルなものは間違いなく弱点ですよね。ただ逆に言うと、こういう状況だからこそ「人々にとって音楽やフィジカルなライブというのは本当に大事なものだったんだな」と、その弱い部分の重要性をあらためて感じさせる機会にもなったと思います。

――コロナ禍を経て、音楽業界やエイベックスのビジネスモデルに変化は起こりそうですか?

 答えはないんですよね。コロナがあってもなくても、テクノロジーの進化とともに音楽のデジタルシフトは進んでいきます。5Gの普及により映像と音楽がより緊密な関係となることで、新たな分野のコンテンツも生まれてくるでしょうし、音楽は今後さらに国境を超えていくでしょう。

 国内で人気のある曲と、アジア、そして世界中の人がみんな知っている曲とではパイが全然違います。そのため、ものによっては世界を狙っていかなければなりません。お隣の韓国では実際にそれができているわけですから。実際に今、仕込んでいるものも幾つかあります。

 日本というパイの消費だけで終わるのか、世界というマーケットを考えていくのかといったら、当然、われわれは世界を視野に入れて考えていく必要があります。今回のコロナ禍でそのことをあらためて感じました。これを世界にキャッチアップする機会と捉え、海外展開をきちんと見据えていきたいなと思っています。

――ありがとうございました。

Key Visual by Hirokazu Mori(waonica)