「国語」改革に、教育現場からも驚きの声

 国語の授業で実用文の学習に重きを置くといっても、具体的にどういうことなのかわからないという人が多いかもしれないので、もう少し説明しておきたい。

 2021年から「大学入学共通テスト」が実施され、それに合わせて高校の国語の改革も行われることになった。そして、この新しい大学入学共通テストのモデル問題が2017年に示された。そこでは、国語に関しては、生徒会の規約、自治体の広報、駐車場の契約書が問題文として出題されたのである。たとえば、架空の高校の生徒会規約を生徒たちが話し合う会話文を読ませるような問題が出題された。これには教育現場にいる教員たちから驚きの声が上がった。

 2022年度からは、このような問題を解けるようにするための国語の授業を全国の高校で行うようになるわけである。これまで指導要領をいくらいじっても高校も教科書会社も動かなかったため、文科省は大学入試を変えることで、高校の授業や教科書を無理やり変えざるを得なくするという手段をとったのだ。

 こうした動きに関して、日本文藝家協会による「高校・大学接続『国語』改革についての表明」では、次のように懸念が表明されている。

 「あたかも実用文を読み、情報処理の正確さ、速さを競うための設問といった印象も受けます。この点に関しても、複数の識者たちから疑問の声が出されています。
このように、とくに高校と大学と接続した教育現場でこの数年で起きることはおそらく戦後最大といってもいい大改革であり、日本の将来にとって大変に重要な問題をはらんだ喫緊の課題です」(文藝家協会ニュース2019年1月号)

 この改革により実用文中心の教科書が作成されることになる。手元にある現行の「現代文」の教科書には夏目漱石、芥川龍之介、宮沢賢治、中島敦など文豪の作品が載っているが、「現代文」が「論理国語」(実用文中心)と「文学国語」(文学中心)に分かれ、そのいずれかを学ぶことになる。そうした文豪たちの作品は当然のことながら「文学国語」に入るはずだ。入試動向に合わせて多くの学校は「論理国語」を選ばざるを得ないだろう。その結果、多くの学校の生徒たちは、文学でなく実用文中心の国語の教科書で学ぶことになる(形式上、文学を含む教科書も残るが、現実には入試対策の必要上、その教科書を採用する学校は少なくなることが推測される)。

 これに関して、作家の三田誠広氏は、ある会議において、学力問題と絡めながら、次のように懸念を示している。

 「(前略)大学入試の共通試験の問題例が出た。駐車場の契約書、レポート、統計グラフ、取扱説明書が読めるようになることが、文部科学省が考えている国語力だ」(文藝家協会ニュース2019年11月号)

「小説を読むと地頭がよくなると、進学校はみなわかっている。私立の進学校は大量の読書をさせて、議論をさせる。ところが文部科学省が考えているのは中から下、二人に一人が大学に進学する時代になり、簡単なレポートも書けない大学生がいるので、ちゃんと実用的な論理国語を学ばせる方針だ」(同)