ゲーム理論とアファーマティブ・アクション
ここでゲーム理論を使って、うまく「本当の希望」を提出させるように、うまくマッチングシステムを作ってやる、ということが重要な問題になる。実際に、今でも多くのゲーム理論家がこの問題に取り組んでいる。
この問題をさらに複雑にするのが、アファーマティブ・アクションである。たとえば「各学校で、ある特定の人種(ここでは、人種Cとしよう)の割合を少なくとも10%にする」という政策を考えたとしよう。これを達成するマッチング・システムを作るのは、なかなか難しい。
例えば、ある人種Cに属する生徒は、学校Aが第1希望、学校Bが第2希望だとする。そして、学校Bは人種Cにとって不人気だとしよう。そうすると、「学校Bに人種Cが少なくとも10%」という政策目標を叶えるために、マッチング・システムとしては是非ともこの生徒に学校Bに入学してほしいと考えるかもしれない。
しかしそれではこの生徒としては、せっかくの第1希望である学校Aに行けるチャンスが減ってしまう。だから、「学校Bを第2希望に書くのはやめよう」となってしまうかもしれないわけだ。
ではどのようにマッチング・システムを作ったらいいか、というのは重要な問題であるが、かなり込み入った話なので、ここでは避けることにする。しかし、どうやら、社会の中での意思決定を分析する「ゲーム理論」がアファーマティブ・アクションを運用するにあたって重要になりそうだ、ということはご理解いただけたのではないだろうか。
教育は、人生を変える。その機会をできるだけ公平に子ども達に授けることは、望ましいことだろう。Black Lives Matterに象徴されるこうした現代社会問題を考える上で、「ゲーム理論」が役に立つのだ。