コロワイドによる大戸屋への敵対的TOB。コロワイド側の関係者は「100%に近い確率で成功する」と語るなど、コロワイド優勢との見方が多数派だ。しかし一部の市場関係者は、「不成立になるのでは」と指摘。コロワイドの足をすくいかねない2つの“落とし穴”があるという。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
コロワイドの大戸屋への敵対的TOB
「9割以上の確率で成功」と楽観視
「今回のTOBは成立しないのではないか」――。こう漏らすのはある証券会社の関係者だ。
定食チェーン「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングスが、筆頭株主の外食大手・コロワイドからTOB(株式公開買い付け)を仕掛けられている。
8月14日に発表された大戸屋の21年3月期第1四半期の決算は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、売上高は前年同期比48%減の約32億円、最終赤字は15億円と苦しい状況だ。自己資本比率も17.4%と、前年同期の37.2%から大幅に減少した。こうした散々な結果は大戸屋株主を失望させ、TOB応募へと後押しする。
コロワイドが提示したTOB価格は3081円。TOB発表直前の大戸屋株価は2113円(7月8日の終値)で、5割弱のプレミアムを上乗せしている。
このTOB価格に対して、「急成長が見込めない外食業界。かつ大戸屋の前期決算は赤字。そうした企業に対して、このTOB価格は割高で強気の値付けだ。株主は好条件で売却する良いチャンス」(業界関係者)と評価する声が上がっている。
絶体絶命の大戸屋は、ホワイトナイトの出現もなければ、目立った買収防衛策も講じていない。8月14日に有機野菜の宅配サービス、オイシックス・ラ・大地とコラボメニューなどの提供を視野に業務提携を発表したものの、この提携はTOB阻止の決定打にはもちろんならない。
現状で大戸屋の経営陣は、株主に対して「TOBに応募しないでくれ」と感情に訴えることしかできていない。
こうした大戸屋の状況を踏まえ、コロワイド側の業界関係者は今回のTOBについて、「9割以上の確率で成功する」と楽観的な姿勢だ。
ところが、一部の投資ファンドや証券会社の関係者は、「TOBは成立しない可能性がある」と警鐘を鳴らす。そこには2つの理由があるという。