ベンチャーキャピタル、PEファンドとの対比

朝倉:スタートアップ経営者の方からも、グロースキャピタルとVCの違いについて質問されることがよくあります。一般的にVCの場合、シード・アーリーの初期的な段階のスタートアップに対する投資を実行します。

リスクの大きな早期から投資を行うわけですから、必ずしも全ての会社が順調に成長するというわけではありません。確実に当てるというわけにはいかないので、出資先の数も自然と多くなりがちです。

そうした中で、次のラウンドに進む会社の中から有望だと感じる先に対して継続投資を行い、最終的に、多数投資したうち1社でもFacebookのように特異な成長を遂げる企業を出すことを企図しています。これが、VCのリターンは「べき乗則」が成立するといわれる所以ですね。ごく一部の突出した投資先が、ファンドのリターンの大半を稼ぎ出すというわけです。

一方で、グロースキャピタルの投資対象はシード・アーリー期のスタートアップではなく、主にレイトステージの、組織やプロダクトがある程度確立している会社です。そういった会社に投資して、1社1社着実な成長を狙っていくことに主眼を置いています。

金融商品としてVCとグロースキャピタルを比較すると、ハイリスク・ハイリターンで場外ホームランを狙うスタートアップに出資することが、本来的にVCに期待されているリスクのとり方であるのに対して、グロースキャピタルの場合は、より打率が重視されるという違いになるかと思います。

ですので、VCとグロースファンドでは、あるべきリスクの取り方が全く異なります。ファンドを運営する側もまた、自分たちがどういうアセットクラスなのかを自覚して振る舞う必要があります。

村上:ベンチャーキャピタルとグロースキャピタルの違いは、先ほど挙げていただいたような投資フェーズの違いや、リスクの取り方の違いに表れますが、類似点は、マイノリティ出資であること、経営をコントロールすることが目的ではないことでしょう。

PEファンドとグロースキャピタルの違いは、PEファンドが、レバレッジド・バイアウトという行為に見られるように、レバレッジをかけて利鞘を稼ぐことを企図するのに対して、多くの場合、グロースキャピタルはリスクを取って資金提供することで、デット比率を下げる方向に作用することを企図する点です。

またPEファンドの場合、割安株を買って、リストラクチャリングを行い、コスト削減することで収益性を向上させ、投資回収するのが一般的です。一方で、グロースキャピタルはリストラクチャリングよりもむしろ健全な事業成長、その名の通り「グロース」を支援し、それにより投資回収を試みます。

両者とも経営への関与を重視するという点は同じですが、対象企業の性質が少し異なりますね。このような形で三者比較をすると、グロースキャピタルの輪郭がより見えてくるのではないでしょうか。

*Disclaimer: シニフィアン株式会社はグロースキャピタル『THE FUND』を運営しています。

*本記事はVoicyの放送を加筆修正し(ライター:岩城由彦 編集:正田彩佳 記事協力:ふじねまゆこ)、signifiant style 2020/6/14に掲載した内容です。