長期政権の首班の辞任は経済に大きな影響を与え、首相辞任の一報が流れてから相場も急変した。さらに現在は、コロナ禍という経済へのマイナス要素がある。コロナ禍が中国だけでなく全世界の問題となり、日米欧の経済は戦後最悪のGDPマイナス成長となった(8月17日付日本経済新聞)。

 経済学では貨幣を「信用」ともいう。これは、貨幣とは皆がそれに対して「価値がある」と信じて、不安がない状態を指すものだからだ。つまり、貨幣経済によって成り立つ我々の社会は、人々が「景気が良い」と主観的に思うことで景気は良くなるし、「景気が悪い」という印象を持てば悪くなるものであり、まさに「景気は気から」なのである。

 たとえば、為替市場の急激な変動に対して、中央銀行が流れを変える取引を行うことも、それ自体が為替を動かすわけではない。「この変化は望まれていないだろうから、取引はやめておいた方がよさそうだ」といった主観的な判断を民間部門に誘って同調させるための、気持ちへの働きかけという要素がやはり強い。経済のコントロールとは、人々の主観をコントロールすることでもある。

長期政権には課題もあるが
「信用」を醸成して日本経済を支えた

 その意味で、予定外の首相辞任は当然ながら不安を呼び起こし、日本経済に対する信用を押し下げることにつながりかねない。日本にもいろいろ課題はあるが、そうはいっても長期安定政権が続いており、不安要素が少ないというのが、世界から見た日本の評価である。それは信用に繋がり、日本経済を支えてきた。

 安倍政権の主要課題の1つは、経済問題であった。アベノミクスは批判もあったが、2012年以降の景気回復を演出し、個人消費という課題は残したものの、企業収益や雇用環境などの面で一定の成果も出してきた。アベノミクスの本質も、「アベノミクスで経済は良い方向に進む」と多くの人が信じた、ということが何よりも大きい。

 長期的な安定政権が、一貫性のある持続的な政策を実行するということへの主観的な安心感が、景気を支えてきたという要素も、少なくない。アベノミクスの政策の中には、海外から日本へ積極的に投資を呼び込むというものもあったが、日本経済に対して「長期的に安定している」という信用があるからこそ、日本への投資が促進されるのだ。