中学受験マンガ『二月の勝者』とコラボした書籍『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』が話題の教育ジャーナリストのおおたとしまささんと、『中学受験 大学付属校合格バイブル』の著者で中学受験カウンセラーの野田英夫さん。今、話題の本の著者であり、長らく中学受験業界を見てきたお二人に「中学受験」の最近の傾向や、人生への生かし方についてお聞きしました。
(構成 井上敬子)

――おおたさんの最新刊「中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉」が話題ですね。人気マンガ『二月の勝者』のシーンを借りながら、中学受験に大きな気づきを与える「言葉」がちりばめられています。合格ノウハウ本ではない、このような書籍は中学受験本では珍しい感じがしますが‥‥‥。

おおた 今回の本に関しては“中学受験界の相田みつを”を目指しました(笑)。受験生の親が子どもに伝えてほしいメッセージを具体的な言葉として100個あげました。今までの本でも、現場の塾の先生は立場上言いにくいことを書いてきたつもりですが、今回の本もそうかもしれません。

野田 我々、塾の教師の使命は、やはり成績を上げて志望校に合格をさせることだと、親御さんたちも思ってらっしゃいますからね。本心では「中学受験の一番の意義はそこじゃない」と思っていても、なかなか言いにくいので、書いてくださってとてもありがたいです(笑)。

今の中学受験は親の関与は大前提になっている

おおた 最近の傾向として、中学受験に「親の関与」が大前提になってきている。これは、とても危険な傾向ですね。

野田 そうですね。「中学受験は親の頑張り次第」という風潮があるので、親御さんへのプレッシャーが本当に強いのを感じます。

おおた 励ましや応援といった子どものサポートはともかく、「親の受験テクニック」的なところに焦点が当たりすぎている感じがします。たとえば、受験ノウハウ本に書いてあることをまねようとしても、なかなかできないんじゃないでしょうか。少なくとも僕には無理って思っちゃいます。あれをぜんぶ本当にやろうと思ったら大変。親の負担と責任が大きくなっていますね。多すぎる宿題は間引いてやるというのは必要なことだと思いますが、じゃあどこを間引けばいいかって、普通の親にはわからないでしょう。負担をかけずぎて子どもを潰さないことが優先なので、間違えたっていいと覚悟を決めて間引くことが大事だと思いますけどね。

野田 うちの塾では、基本的には勉強はすべて塾にいる間に自習してもらうので、家では勉強しなくていい。だから親御さんは何もやらなくていいんです。すると、最初面談にいらした時には目がつり上がって、心が病んでいそうな親御さんの表情が少しずつ明るくなっていくんですよ。親御さんのプレッシャーの強さを感じると同時に、そこから解放してあげたいと思いますね。

おおた 親がどうやって子どものコンディションを整えるかというのはまだしも、いかに勉強をやらせるか、いかにあの手この手で詰め込むかという「大食い競争」のテクニック論になっているのが問題ですね。

野田 本の中にも「中学受験勉強は大食い競争じゃない」という言葉がでてきますが、本当にそう思います。私がこの本で、特に印象に残ったのは、中学受験をマラソンになぞらえた話。大学受験は、浪人の選択肢があるから制限時間がないマラソンだけど、中学受験は、目標地点も制限時間も決められたマラソンになっていると。目標設定を「42.195キロを3時間で走る」から「3時間でどこまで走れるか」というマラソンだと考えるようにすればいいというのは、その通りだと思いました。そう考えれば、子どもが頑張っているのに「偏差値60以下の学校には行かせません!」みたいな言葉が親御さんから出てくることもないでしょうし……。

『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』より。書籍中のイラストは『二月の勝者−絶対合格の教室−』(C)高瀬志帆/小学館「週刊ビックコミックスピリッツ」連載中

おおた そう思ってくれる親御さんが増えればいいんですが、走っている最中にはなかなか気づけないのかもしれませんね。