あらゆる業務改善は「自己破壊」から始まる

――森さんが業務効率化に徹底してこだわっている根幹が理解できたような気がします。

 それともう一つ大事だと思うのは、そもそも業務改善は「自己破壊」から始まるという点です。組織の業務改善もそうですが、特に個人の業務を改善しようと思ったら「これまでの俺のやり方は間違ってたんだ」「だから変えなきゃいけないんだ」という思いが必要です。まさに自己破壊です。どんなことでも、そうやって自己破壊できる人は改善しますし、自己破壊できない人はなかなか難しいのだと思います。

 これまでだってパソコンは問題なく使えてきましたし、マウスの依存度が高くたって普通に仕事は終えられました。人によっては「あいつより仕事はデキる!」「自分は優秀だ!」という自負がある人もいるでしょう。そういう人たちが、どれだけ自己破壊をできるか。ここがものすごく大きいと思います。

――どれだけ自己破壊できるか。多くのビジネスパーソンに刺さる言葉ですね。

森 はっきり言って、脱マウスでショートカットキーをマスターするとか、パソコンの事務処理能力を高めるのは、自分の中で完結してしまうものなので、本当に地味なんです。人に自慢できるものでもないし、なかなか人から評価されるものでもないと思うんです。でも、そういうところを改善できる人が、本当の意味での業務改善ができる人だと思いますし、そういう人が自身の可処分時間を増やしていくのだと思います。

エクセルで発覚!仕事が「できる人」と「できない人」を隔てる決定的な差とは?

――これまでセミナーを開催してきて「こんなに劇的に変わった」という印象的な参加者の方っていらっしゃいましたか?

 一番印象に残っているのは、ある外資系企業で働く男性です。その人は、とにかく仕事が忙しくて、もともとは「少しでも睡眠時間を確保するためにセミナーに参加した」と言っていました。仕事は本当に忙しいらしくて、会社も、仕事も大嫌いだと言っていました。

 でも、その人がスゴイのは、本気で業務改善をしたくて、結局セミナーには16回も参加しました。そういう熱意というか、本気度っていうのは、心から尊敬できるところです。それで最後に彼が言っていたのが「もともと自分は高収入とか、高い評価とか、そういうものを求めてがむしゃらにやってきて、食らいつくのが精一杯だった。でも、仕事のやり方を改善して、少し時間が持てるようになってきたら、仕事も、会社も好きになってきた」ということでした。

 きっと彼は業務を効率化することで、時間と心に余裕ができて、会社のこと、組織のこと、自分のこと、お客さんのことなど、いろんなものが見えてきたんだと思います。彼の話を聴かせてもらったときは、私の方が涙が出そうでしたよ。

 脱マウスとか、マウスの依存度を下げて業務を改善するというのは、本当にちょっとしたことです。でも、そうしたことが時間的な余白を生んで、心の余白を作るのだと思います。ホワイトカラーにも心の余白はすごく大事ですし、心の余白は完全に時間の余白とシンクロしています。だから、一人でも多くの人に、この本で語っているような業務を効率化できるノウハウを身に付けて欲しいと思います。本のタイトルにあるような「脱マウス」を完全に実現しなくても、「マウスの依存度」が下がるだけでも、仕事の効率は劇的に変わってくるものです。

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