平井陽一朗(BCGデジタルベンチャーズ マネージング・ディレクター&パートナー ジャパンヘッド)
平井陽一朗(BCGデジタルベンチャーズ マネージング・ディレクター&パートナー ジャパンヘッド)

ここまで、企業変革を阻害する要因として、人事組織トップ層のデジタルリテラシー短視眼点な経営やCEOの報酬体系について述べてきた。今回は5つ目の要因、引退を視野に入れた経営層の「逃げ切り思考」について考えたい。

テレビ産業が示す、
世代の断崖絶壁(クリフ)

 まず、私の個人的な回顧話をさせていただきたい。一昔前、テレビ業界は誰もが憧れる「花形産業」の一つだった。小中学校では、友達のほとんど全員が同じテレビ番組を見ていて、ドラマであれ、音楽番組の「ザ・ベストテン」であれ、アニメであれ、野球であれ、翌朝には昨晩のテレビ番組の話で盛り上がったものだ。就職活動の際には、テレビ局は憧れの就職先であり、ミーハーな私もご多分に漏れず某キー局を受けたことをよく覚えている。

 さて、時代は変わり、今もテレビは私の自宅の居間にあるが、子供たちを含めて、放送電波に乗った映像をテレビモニターで見ることはほぼない。テレビCMも目にすることも少ない。画面を占領しているのは、Youtube、Netflix、Amazon Prime等である。周りのご家庭も、多少の個人差はあっても似たような状況のようだ。ちなみに、私の子供たちは番組表に沿って放映されるテレビを「生テレビ」と呼んでいて、先日「生中継」との違いを説明させられた。それほどオンデマンド型の放送が身近であり、そうでないものは逆に珍しいという世代なのだ。

 一方で、70代の両親が住む実家に行くと、いつも必ずテレビがついていて、バラエティやドラマを見ている。テレビが今や高齢者向けのニッチな媒体になりつつあることを痛感する。

 某キー局に勤める、旧友はこう嘆く。「上の連中は“逃げ切れる”からいいよなぁ。だけど俺たち40代中盤はさすがに厳しいよ。今さら転職ってワケにもいかないしなぁ…」