なにもかもお見通し!
監視社会の怖すぎる5つの実態

 行動データを分析することによって、ポジティブに見れば、さまざまな社会的な問題行動の改善が実現されるだろう。一方、ネガティブな面に目を向ければ、かなり恐ろしい状況になっている。

 もちろん日本ではまだそうした状況ではないものの、もし将来、社会全体が監視社会になって、企業がそのデータを利用できるようになった時に、テレワーク中の記録とマージされるとどんなことが起こる可能性があるのか。監視社会の怖すぎる実態を、ここでは5つ挙げて説明したい。

1.内面までバレバレの状況である

 アクティビティーのログがすべて会社に残るということは、あなたが何を考え、何を意図して、何をしようとしたか、がほぼ捕捉されるということでもある。『1984年』ではテレスクリーンだけでは人の内面まで把握することはできず、当人の意思に反して彼の考えることを発見する方法に多大なエネルギーが投入されていた。顔面の表情や動作、声の調子を検査しテストしていたのである。

 しかし、今や、テレスクリーンの代わりに、PCとスマホに個人が勝手に自分の思考の断片をインプットしてくれる。データがたまってくれば、総合的に個人の全体像(あなたが何者か)を再構成することはわけもない。それは、あなたがあなたについて理解しているよりも高い精度で行われるかもしれない。そのときデータで再構成された「あなた」は、「本当の自分」とは違うと主張したところで、「本当の自分」というものはデータでない以上証明のしようもない。

2.あらゆるデータが名寄せされ、全行動が捕捉される

 会社から支給されたPCやスマホを使わなければ、全体像は捕捉されないと考える人もいるかもしれない。しかし、すでに、公共の場に置かれたカメラの前を通りがかった人の個人データをリアルタイムで把握できる技術は開発されている。通行人の画像を顔認識ソフトウエアやフェイスブック上に公開されたタグづけされた写真データベースなどと照合するだけで、それは可能になる。あなたが、会社に関係のないところで行っている行為も情報が合成され、最終的には会社に筒抜けになる。

3.イレギュラーな行動はマークされる

 あなたが、自宅や職場から一定以上離れた場所に移動したときなど、「通常の状態」から少しでも逸脱したり、イレギュラーなふるまいが検出されたりした場合、監視システムは「フラグを立て」、調査の対象とみなすであろう。

 さらには、誰が携帯電話の電源を切り、どれくらいの時間その状態にしていたかというデータに基づいて、同じ場所で同じ時間に電源を切っていた人たちを特定することもできる。社員同士の秘密の会合はいとも簡単に突き止められるだろう。ちょっと気まぐれに遠回りして帰る、思い立ってふだん見なかった映画を見に行く、などということもしづらくなる。

4.データが半永久的に消えず、証拠になる

 私たちが生成した大量のデータは半永久的に保存される。証拠あさりが過去にさかのぼり、10年前、15年前、もっと昔の行動がほじくり返される可能性まで出てきた。人生を通じてすべての言動が永久に記録されるのだ。

 かつて多くのコミュニケーションは、その場限りだったが、今は違う。口頭の会話がすべて記録されるようになる日も近い。メールはすでに会社に掌握されている。高度なテキスト分析AIにより、はっきり経営陣の悪口が書いていなかったとしても、「危険分子」が符牒や暗号を使って経営批判をしたり、そのための会合を設定したりしている、などということが瞬時にわかる。

 Web会議の記録も保存される。“心ここにあらず”や“経営陣に対する不満”は微細な表情筋の動きをも決して見逃さない画像認識AIの判定によって「表情罪」が成立し、閑職に追いやられるかもしれない。