予防ワクチンを接種すると、罹患の確率が2%から1%に低下すると仮定して、ワクチンの価格が3000円であれば、普通の人は接種しないであろう。接種することで本人の損失の期待値は2000円(20万円の損失の可能性が1%下がる)しか減らない。ワクチンの価格3000円は割に合わないからである。

 しかし、それによって世の中の損失の期待値は5000円となる。20万円プラス30万円で合計50万円、その1%で5000円である。それならば、公費で3000円を負担して、無料で接種してもらった方がよいはずだ。

ネズミ算的な増え方を抑制できる

 上記では、「ワクチンは罹患する確率を2%から1%に下げる」と仮定したが、実はその仮定自体が変化する。

 今日の罹患者数を所与とすると、全員が接種した場合と誰も接種しなかった場合で明日の罹患者数が異なるから、明日以降に罹患する確率はケースごとに異なるのである。

 だれも接種しないと明日の罹患者は増え、明後日の罹患者はさらに増え、ねずみ算的に罹患者が増えていく可能性が高い。そうなれば、明日以降にワクチンを接種しても罹患する確率は結構高い、ということになるかもしれない。そうなれば、国民の医療費がかさみ、それが財政を圧迫することになる。

 反対に、全員が接種すれば明日の罹患者が増えないので、明後日の罹患者も増えない可能性が高い。そうなれば、「患者数が増えないなら、経済活動を思い切り再開しよう」ということになり、自粛を続ける場合と比べて経済的なメリットは計り知れないものとなるであろう。

 医療費の抑制による財政支出の減少や経済活動の活発化によって得られる税収等々を考えれば、ワクチン接種費用を公費で負担することは、十分ペイするはずである。

発症しにくい若者の接種が必要

 上では属人的な違いをとりあえず無視したが、実際には若者は罹患しても症状が出にくいので、接種を受けるインセンティブが小さいはずだ。しかし、無症状で活発に行動している間にも他人に感染させる可能性があるので、社会に与える損失の期待値はかなり大きいかもしれない。

 筆者は、インフルエンザでさえも全員無料で予防接種を受けさせるべきだと考えている(拙稿ご参照)が、インフルエンザであれば若者も罹患すると苦しいので、接種のインセンティブを持っているし、無症状で活発に行動している人が他人に罹患させることも少ないであろう。

 それとの比較で考えれば、若者にワクチンを接種させるために無料にすることは十分合理的である。