トランプ米政権で1年前まで大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務め、6月に出版した暴露本では政権を厳しく批判するなど世界中の耳目を集めるジョン・ボルトン氏に単独インタビューを実施。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#15では、そんな同氏に米大統領選挙や米中争いの行方、そのはざまで揺れる日本の役割などについて赤裸々に語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
依然として劣勢のトランプ大統領
「10月サプライズ」の可能性は高い
――旧知の仲の安倍晋三前首相について、近著『THE ROOM WHERE IT HAPPENED(邦題:ジョン・ボルトン回顧録)』では150回以上も名が出る一方、昨年のイラン外交時は厳しく批判していました。その安倍氏が退任しましたが、外交政策などをどう評価しますか。
彼は素晴らしい仕事をしたと思いますよ。安倍前首相の退任は日米関係にとって大きな損失です。
イラン外交を巡る批判は、彼に向けたものではありません。どういう訳か日本では、北朝鮮の核計画の方が、イランの核より脅威だとの認識が広がっているように見受けられますが、そこは地理的な要因もあると理解しています。
私としては米国から見た場合、北朝鮮だろうとイランだろうと、ならず者国家の間に核が広がるのは危険です。従って、あらゆる状況には個別の事情がありますが、日米が北朝鮮に取ったアプローチは、イランに対しても取るべきだと考えています。
いずれにせよ、日米関係は米国の中で最も重要な同盟関係の一つです。今世紀についていえば、それはイランや北朝鮮に対してではなく、対中国を考える上でです。
――ある記事でトランプ米大統領が大統領選挙を前に「オクトーバーサプライズ」を行う可能性があると話していましたが、何を行うとみていますか。
トランプ氏は8月の共和党大会を経ても、依然として対立候補のバイデン氏(民主党、前副大統領)に後れを取っています。少しずつ差が縮まっている州もありますが、全体的には明らかにまだ大きい。よって、投票日までに3回行われる討論会が、結果を占う最も重要な要因となる可能性があります。
その上で、トランプ氏が大統領選直前の10月、劇的な政治手法で劣勢から挽回しようと試みるオクトーバーサプライズに踏み切る可能性は高いとみています。彼には多くのオプションがある。