「いつの間にか議論がこっちに及んできていた」

 今月、国土交通省は来年度の予算概算要求概要で住宅金融支援機構のフラット35Sの拡充案を正式に発表したが、ある国交省関係者は、その議論が降って湧いたようなものであったことを明かす。

 そもそも、フラット35とは、35年、長期固定の低利住宅ローンのこと。民間金融機関と住宅金融支援機構が提携し、提供している。中でもフラット35Sは、省エネ、耐震性に優れた物件の場合に、フラット35の借り入れ金利から一定期間、さらに金利優遇が受けられる制度だ。

 今回打ち出されたフラット35Sの拡充案は、初めて住宅を購入する人を対象に、融資額2000万円以内の住宅ローン金利に限り、当初10年間の優遇幅を通常の0.3%から0.5%にまで引き下げるとするものだ。若年低所得者の持家取得を後押しするのが狙いなのだが、実はこの政策、経済を活性化させようと国民新党の肝煎りで決められた。

 ただ、国民新党は初めからフラット35Sの拡充を考えていたわけではない。

 もともと7月頭ごろまでは、ゆうちょ銀行を、年収400万円以下の人への住宅ローン事業に参入させようと目論んでいたのだ。

 しかし、こうした低所得者向けの案件は貸し倒れのリスクが高いため、民間金融機関は進んで手を出さない。ゆうちょ銀の新規事業参入で毎度問題視される“民業圧迫”にはならずにすむが、精緻な審査ノウハウがあるわけもないゆうちょ銀は当然、断固反対した。

 そこで急遽、代替案として考えられたのがフラット35の活用だった。

「予算をつけるかどうかで内閣府とものすごい戦いがあった」(下地幹郎・国民新党幹事長)ものの、2020年までに実現すべき目標を掲げた「日本再生戦略」にも盛り込ませ、晴れて今回、初年度の予算、20億円を要求しているという。