【変化した就職の常識(2)】
大学進学率・就職先業界・求人倍率の激変
親世代と大きく異なるのは、就職手法だけではない。置かれている社会・経済環境もこの30年で様変わりしている。ここで特に挙げたいのが、「大学進学率」「就職先業界」「経済成長率/大卒求人倍率」の変化だ。
まず、大学進学率については、親世代が就職活動をしていた時代は25.1%(1988年)と、4人に1人が「大卒」という状況だった。しかし、2018年における大学進学率は53.3%へと伸び、大学生の数は1学年約46万人から約63万人にまで増加している(出典:文部科学省「学校基本調査」、以下同)。
そして、この30年で産業構造は大きく変化し、大学生の就職先業界もがらりと変わっている。親世代が就職活動をしていた時代における就職先の代表としては、当時世界を席巻していた「製造業(メーカー)」があり、大学生の就職先業界の26.1%(1993年)を占めていた。
ところが現在では、製造業に就職する人の割合は12.1%(2019年)と半分以下に減少。代わりに伸びたのがIT業界を含むサービス業で、25.4%(93年)から33.9%(19年)と、その道に進む学生の数も約4万人増加している(※)。
(※)2019年のサービス業は、以下の分類の推計:学術研究、専門・技術サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育、学習支援業、医療、福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)
この大学進学率の上昇や就職先業界の変化は、親子間でどのようなギャップを生み出しているのか。
「親世代では大学に進学するのは当たり前ではなく、『大卒者が就く仕事』には特別なイメージがあった。それに対して、大卒の自分の子どもが、抱いていていた大卒者が就く仕事のイメージとはかけ離れたものや親世代がよく知らない仕事を選ぼうとすると、『どうして大学まで出てこんな仕事をするんだ』と考える親もいるようだ」(増本所長)
もう1つ、取り巻く環境での大きな変化が「経済成長率」の鈍化だ。親世代が就職活動をしていた時代(ここでは1974年~90年度とする)の経済成長率の平均値は4.2%だったのに対し、ここ十数年(2004年~15年度)では0.74%にまで激減している(出典:内閣府「GDP統計」)。
これに伴って大卒求人倍率も、親世代が就職活動をしていたバブル期(92年)の2.41倍から、1.83倍(2020年3月卒学生)にまでダウンしている(出典:リクルートワークス研究所)。さらに今年は新型コロナウイルスの影響もあり、求人倍率はより厳しい状況になるだろう。
求人倍率2倍超というバブル期に就職した親世代は、あまり就職に苦労した経験がないかもしれないが、子世代は厳しい環境に置かれている。それにもかかわらず、自分の経験と比較して、子どもが就職に苦戦していることを嘆いたり、子どもに指摘したりするのは、お門違いと言っていい。