【変化した就職の常識(3)】
専業主婦世帯→共働き世帯の増加

 この30年で社会構造に変化が起きている中で、突出しているのが「共働き世帯」の増加だろう。かつては一般的だった専業主婦世帯だが、労働人口の構成を見ると、専業主婦世帯と共働き世帯の数は1997年を境に逆転し、共働き世帯が増加し続けている。2019年には専業主婦世帯が575万世帯に対し、共働き世帯が1245万世帯と倍以上になった。つまり、共働き世帯が一般的になりつつある状況だ。

 こうした変化は親と子、特に女子学生との労働観の違いを生み出している。

「専業主婦世帯が当たり前だった親世代と子世代では、家庭に対する概念が大きく異なっている可能性がある。つまり、親世代は女性が就職しても、結婚や出産でいずれは仕事を辞めて家庭に入る、または仕事をセーブすることを前提に考えている可能性があるが、今の女子学生の多くは仕事を続け、夫婦で協力して家事や子育てを行うことが前提になっている。その前提の違いから、良い働き方への考え方や就職先選びに関して親子でギャップが生まれかねない」(増本所長)

 親世代は共働き世帯が当たり前になった今の環境を理解し、就職先選びを行う子どもの考え方をぜひ尊重してほしい。

【変化した就職の常識(4)】
終身雇用から転職が当たり前の時代へ

 親世代と子世代では、企業選びなどの「志向」にも大きな変化が起きている。親世代の就職活動では、大企業やブランド力のある企業へ入社し、定年まで勤めあげることを理想と考える人が少なくなかった。

 しかし近年の学生は就職先を選ぶ際、「企業のブランド力」よりも「自分の成長」に軸足を置く傾向が強まっており、新卒で就職活動をする際から転職も見通しているケースが多く見られている。実際、就職みらい研究所が行った調査(2019年1月)で、2019年卒学生に対して「就職先を確定する際に決め手となった項目」を尋ねたところ、「自らの成長が期待できる」と答えた人が47.1%と、約半数に上っていた。

「今の学生は時代の変化をビビッドに感じ取っていて、新卒で入社した企業は一生安泰だとは思っておらず、将来を見通しづらい時代では『自分の成長こそが安定につながる』と考えている。だからこそ、ここ数年は汎用的な力を身につけたいと考えて就職先を選ぶ学生も増えているようだ」(増本所長)

「自らの成長が期待できる」という軸で子どもが選んだ就職先に対して、「そんな会社、聞いたことがない」と一刀両断する親もいるかもしれないが、どんな大手企業でも経営危機に陥る可能性のある時代だ。

 ブラック企業かどうかなどには注意が必要ではあるものの、大手企業かどうか、名前を聞いたことがある企業かだけで判断するのではなく、子どもの成長に本当につながるのかどうか、そうした点も含めて子どもにアドバイスするようにしてもらいたい。