以前、 私が行った講演に寄せられたコメントで、「強面で“輩”のようなクレーマーの自宅で、正座を1時間以上続けたことがある」という方がいました。少し自慢げで、武勇伝であるかのような語り口が印象に残っています。その発言を聞きながら、「そこまで相手の言いなりになるのではなく、どこかで中座するべきだったのに」と思う気持ちもありました。

 しかし、当時は顧客満足(CS)の考え方が第一とされ、“クレーマー”という言葉は世の中にそれほど浸透していなかった時代だと思います。「目が肥えた難しいお客様」と理不尽な「クレーマー」の間に 明確な基準も設けられていない不安の中で、強面のクレーマーの前で1時間以上も正座していた彼自身が、一番の被害者なのかもしれません。当時は同じ苦しみを味わった人も相当数いたのです。

 私自身もクレーマーの前で正座をしたことがあります。

 激怒するクレーマーの前で初めて正座・謝罪を体験した時のことは、今でも鮮明に覚えています。それだけ、心細く印象の強いものでした。