対象者には、血液検査(推定糸球体濾過率。eGFR)と尿検査(アルブミン/クレアチニン比。ACR)が、5年ごとに20年間にわたって行われた。腎疾患ガイドラインに関する国際機関であるKDIGOの定義に沿い、eGFR60mL/分/1.73m2未満またはACR30mg/gCr以上をESRDのリスクとし、20年間で1度もこの基準に至らなかった群、1回のみ基準に至った群、複数回基準に至った群という3群に全体を分類した。
20年間で対象者の16%に当たる427人が、少なくとも1回、ESRDリスク基準に至り、ハイリスク群と見なされた。研究期間終了時点に施行された認知機能テストのスコアを、糖尿病、高血圧、脂質異常症、および社会人口統計学的因子など、認知機能に影響を及ぼす可能性のある因子で調整後、前記の3群で比較検討した。その結果、ハイリスク群はリスクのない群に比し、思考テストのスコアが平均で4分の1ほど低かった。この差は9歳分の加齢変化に相当するという。
Sedaghat氏によると、近年の研究から、腎機能がわずかに低下するだけで脳に対する毒性が認められ、認知機能低下のリスクを高める可能性のあることが明らかになりつつあるという。そして本研究の結果も「その可能性を支持する新たなエビテンスである」とするとともに、「中年期の思考スキル低下を防ぐ戦略の一つとして、若年期の腎機能を継続的に評価する必要があることが示唆される」と述べている。
なお、本研究は血液検査と尿検査が5年ごとに行われたが、認知機能テストは研究期間の終了時のみ実施された。同氏は、腎機能低下の認知機能への影響を詳細に検討するために、今後の研究では、認知機能テストも複数回実施してその変化を把握すべきとしている。(HealthDay News 2020年9月3日)
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