「食」は最強の
コンテンツビジネスである

対談写真写真右:ポケットマルシェ代表取締役CEOの高橋博之さん/写真左:同社コミュニケーション戦略顧問の田端信太郎さん

田端 極端な話、食べ物がガソリンみたいなコモディティになってきてるんです。足りなくなったから給油しよう、みたいな。まだ今は「どこ産の野菜かな?」って表示を見たりしますけど、ガソリンって「どこ産」とか気にしないじゃないですか。「きょうは贅沢にハイオクだ!」ってならない。でも一歩間違うと食べ物だってそういう扱いをされかねない。

 一方で、ワインが良い例ですが、ワインって産地や発酵・ろ過のプロセス、ブランドや何年物とかに関心が向けられますよね。農作物だって、そういうブランディングができるはずなんです。ビジネスとして第一次産業はポテンシャルを持っていると感じます。

高橋 生産者って「食えばわかる」って言うんです。でも、「食」に困ることのあまりない日本では食べ物って大抵「食う前に選ばれちゃう」んです。特に今はコロナで外出自粛になって、ネットで画面に陳列されたものから食べ物が選ばれることも増えた。その向こう側には、それを作っている生産者が外に出て自分の体を動かして採っている実態がある。圧倒的な生のリアリティーがある。

 そのリアリティーに触れる機会のない都市の消費者が、農家や漁師の世界とつながるって大事だと思うんです。そうした世界を消費者へ伝えてもらうために、その方法や知見をたくさん持っていらっしゃる田端さんにお願いして顧問をしてもらっています。

田端 食べること自体、また、食べ物の価値を知って味わうこと自体が最強のコンテンツビジネスなんですよ。野菜にしろ魚にしろ、まったく同一のものって存在しないですよね。一つ一つに個性があるし、作り手にも個性がある。これまでは規格外のひん曲がったキュウリとかって市場に出られなかったですけど、それだって「とぐろを巻いてるキュウリ」くらいになれば、それがもうブランドですよ。買えないですもん、他で。規格外のものを不良品と思うか個性と思うかですよね。

 仮に「とぐろ巻いてるキュウリの方がビンに入れやすくて浅漬けにしやすいし、うまいんです」ってストーリーが伝えられたら、つまり「ならでは」の伝え方ができたら、それはすでにブランディングの武器なんです。

――それを発信しつつ武器にして生産者が消費者と直に売り買いできるのが今のポケマルですね。

田端 もしワインがガソリンみたいに「リッター何円」で売られてたら、どうですか? 野菜なんかは、そういう感覚で売られている側面があると思う。それは、大量パッケージ化に規格が役立つからでもあるし、農家の人も規格に合わせようとして作っているからでもあるでしょう。

 でも、これは誰が悪いという話ではなくて、僕がしているのは、それが是とされていた時代から、これからは形も質も差別化してコンテンツにしてやれる時代になるよ、というかそういう時代にしようよってことです。