そもそも「支払能力」の審査をした上で一括請求をしているのか。筆者がかつて日本学生支援機構に取材した際、次の説明が返ってきた。

「以下の理由により、繰り上げ一括請求時に債務者の支払能力の審査は行っておりません。
(中略)こうした再三の督促・連絡を行っても返還や猶予の手続き等がない延滞9カ月以上の者に対して、繰り上げ一括請求を行っております。返還が困難な状況であれば、機構に返還期限猶予の申請等など連絡があると考えられ、連絡も無く延滞状態を継続しているものは、機構としては支払能力があるものと認識せざるを得ず、次の世代の奨学金の原資を確保する観点から、厳しい対応をせざるを得ません」(日本学生支援機構)

 長期間連絡がないことが、どうして「支払能力があるものと認識せざるを得ない」ことの根拠になり得るのか。この点については、今回あらためて説明を求めており、回答を待っているところである。

 また日本学生支援機構がいう「次の世代の奨学金の原資を確保」するためという理由にも疑問がある。一括請求をすれば未払い元本が一気に何百万円という規模になるので、延滞金(現在は年3%~1.5%)が増える速度も劇的に上がる。分割和解が成立したとしても、月々の返済金は、まず延滞金に充当される。訴訟に要した費用も元本より先に払わされる。一度でも払えなくなれば全額請求されるので、破産によって救済を求める可能性が高くなる。

 もし、一括請求をせず、当初の計画どおり分割で払う仕組みであれば、滞りながらでも少しずつ払うことができる。払った金は元本に入る。元本回収にとっても一括請求は百害あって一利なしというほかない。