「役に立たないけど、夢中になれるもの」が大事
小野 そもそも、イノベーションが起こるパターンの一つは「繋がらない」と思っていたものが「繋がるとき」です。
『その仕事、全部やめてみよう』にも書きましたが、スティーブ・ジョブズは大学時代に「カリグラフ(文字の形状の美しさ)」の研究をしていました。
それが後に「美しいフォントを持つコンピューター、マッキントッシュ」のイノベーションに繋がるとは誰も思わない。本人だって、最初は思っていなかったはずです。まさに「繋がらない」と思っていたものが「繋がった」瞬間です。
だから、役に立つことだけをやっていてはダメで、「役に立たないけど、夢中になれるもの」が大事なんです。雑談をしていると、仕事、プライベート関係なく、その人が「夢中になっていること」が見えてきます。そういうものって限界がないので、満点を超えていけるんです。
――「役に立たないけど、夢中になれるもの」って、すごくいい表現ですね。まともな会議ではなかなか話題になりにくいので、まさに「雑談ならでは」ですよね。
小野 本当にそうです。もともと僕は「その人を理解しよう」「その人の特性を知りたい」とすごく思っているんです。
仕事をアサインするとき、その人がどんな特性を持っているかを知っておくのは大事ですよね。それも仕事の範囲だけでなく、その人が夢中になっているものを知っておくと、やっぱりアサインしやすいじゃないですか。
休みの日には一歩も外に出ず、ずっと読書している人もいるんです。会議の中で「週末、何やってた?」って聞くと、絶対「本、読んでました」って言うんです。
それで、「言葉の選び方」がポイントになる仕事があったら、その人に振ってみようと思いますよ。それが嫌いな人より、夢中になれる人のほうが成果を出す可能性は絶対高まりますからね。
事例で言うと「AIと機械学習の専任担当者を置こう」という話があったときに、手を挙げたエンジニアに「何が一番好きなの?」と聞いたんです。すると「FXのトレード」だって言うんですよ。かなり夢中でやってるみたいなんです。
AIや機械学習の適用分野として、これまでの値動きから将来の値動きを予測するという分野があります。そこで、僕は「この先2ヵ月間は、仕事中、ずっとFXやってていいよ。その代わり、AIと機械学習を使って、身銭でやってね」と言ったんです。