小野 本人は「えっ、いいんですか」と言ってましたけど、仕事と「自分のやりたいこと」が完全にリンクして、夢中でやっていました。結局、運用結果はプラスにはならなかったみたいでしたけど、そこで学んだことを生かして、その後の仕事では成果を上げてました。(笑)
――「その人の特性知り、特性を生かす」のは、今の時代に強く求められている気がします。
小野 そうですね。これからの時代は特に「平均的にいろいろできる人」より「尖った人」が必要だと感じます。
僕自身、レーダーチャートで特性を表したら、平均的にレベルが高いってことは全然なくて、1つは5点満点中15点を叩き出すけど、0点を取る項目もあります。
一般的に世の中って「足りないところ」がまず注目されちゃうんですけど、じつはそれって時代に即してないんです。
「谷」を埋めるな!「山」を作れ!
かつては製品開発にしても、ソフトウェア開発にしても、日本の中で勝っていればよかった。国レベルの参入障壁もありましたし。でも、今は始めた瞬間からすぐ世界勝負です。
そんな状況なので「癖のある、尖った部分」で勝負しなければ簡単に負けてしまいます。
旧来の日本企業は、いろんな部署をローテーションで経験させて、実際に現場を体験して、いろいろ学んで、どちらかと言うとレーダーチャートの「欠けている部分がないこと」を重視してきました。
製品開発も同じ発想で、「他社と比べて、当社だけこの部分が劣っているのはマズイんじゃないの、君」とか言って、すぐに欠点を埋めるほうに話がいってしまう。
結局、それって勝てないやり方になってしまっているんです。『その仕事、全部やめてみよう』の中でも、マイクロソフトの製品と競合した事例をもとに、「商品・サービスの短所(谷)を埋めるのではなく、長所(山)を徹底的に伸ばすべし」という話をしています。
12年間の義務教育の経験もあるし、新入社員として会社に入ったときは「お前、これを覚えておかないとダメだぞ!」と先輩から言われて、とにかく「谷を埋める」ように、ずっと教育されてきちゃうんです。そのせいで、もともとはすごく突き抜ける可能性があった人が丸くなっていってしまう。
例えば、同級生で「この人はすごいな」と思えるプログラミング能力を持っていた人が、大学を卒業して就職して、自社製品の知識や各部門の業務を覚えていって、しばらく経って会ったときには、かつてあったプログラミング能力の目立った部分が大きく色あせてしまっていたことがありました。
これってあきらかに才能の機会損失で、すごくもったいないと僕は思っているんです。
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