いま注目の戦略コンセプト、「リバース・イノベーション」をご紹介します。「リバース・イノベーション」とは何か。なぜ名だたるグローバル企業がこぞって注力するのか。日本企業は、どう取り組めばいいのか。この連載では、世界的ベストセラー『リバース・イノベーション』の著者で、コンセプトの生みの親でもあるビジャイ・ゴビンダラジャンのインタビューやコラム、また、日本語版の出版に関わったメンバーと新興国市場に果敢にチャレンジしている企業のマネジャーとの対談などを通じて、そのエッセンスを紹介していきます。第1回目は、イントロダクションです。

リバース・イノベーションとは何か?

「リバース・イノベーション」とは、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスの教授であるビジャイ・ゴビンダラジャンが中心となって、2009年頃から打ち出してきた概念です。

なぜ、リバース・イノベーションは、<br />世界中から注目されるのか?<br />――小林喜一郎ビジャイ・ゴビンダラジャン
Vijay Govindarajan
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのアール C. ドーム1924教授。国際経営論担当。ゼネラル・エレクトリック(GE)で初の招聘教授兼チーフ・イノベーション・コンサルタントを務めた。世界で最も影響力のあるビジネス思想家ランキングThinkers50(2011年度)で3位、同時にブレークスルー・アイデア・アワードを受賞。

小林喜一郎 (こばやし・きいちろう)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授。『リバース・イノベーション』日本語版の解説を執筆。

 日本でもすでに、経営学者やコンサルタントなど一部の人の間では注目が高まっていましたが、今回、そのコンセプトがあますところなく述べられた、全世界でベストセラーとなった書籍『リバース・イノベーション』が、日本でもついに出版されました。

 リバース・イノベーションとは、「途上国で最初に採用されたイノベーション」であり、「このイノベーションは意外にも重力に逆らって上流へ流れていく」と、筆者たちは主張しています。即ち、先進国で始まったものがやがて新興国に普及するという、かつての一般的な流れとは逆行するわけです。

 これは一見すると、常識に反することのようですが、本書で詳しく解説されているGEヘルスケアの事例や、先進国で今まで見過ごされていた低価格という市場を狙いつつあるインドのタタの自動車など、この後で紹介する動画のゴビンダラジャンの説明を聞けば、なるほどと思うはずです。