EVの普及促進策と環境面で
覇権強化目指す中国

 もう一つ見逃せないのは、中国において、EVをはじめとする新エネルギー車の普及が加速化していることだ。9月、中国では新エネルギー車の販売台数が前年同期比で67.7%増えた。8月の増加率は25.8%だった。

 中国は新エネルギー車の普及推進などによって環境対策を強化したいと考えている。コロナショックが発生した後、中国では一時、大気汚染が改善し、人々が環境対策の重要性に気づいた。その状況を生かして中国政府は新エネルギー車の販売補助金の支給期間を延長し、環境に対する社会意識を高めようとしている。

 環境政策の強化は、中国が欧州各国やアジア新興国との関係を強化するために欠かせない。EUは環境政策による雇用創出を重視している。中国は、タイでも新エネルギー車関連産業の集積に取り組んでいる。習近平国家主席は、国連で2060年までにCO2排出量の実質ゼロを実現すると野心的な目標を示した。中国が環境政策を強化するために、新エネルギー車普及の重要性は増すだろう。

 それに加えて、新しい感染症の発生は、自動車の重要性を再認識する機会になった。主要国では、通勤手段としての自動車の利用などに加え、飲食や小売り関連企業が移動販売車の利用を重視し始めた。中国では、現地の自動車メーカーや大手IT先端企業であるバイドゥなどが協業して「スマートカー」の開発に取り組んでいる。その取り組みに、米クアルコムなどが参加している。

 さらに、北京市は移動する都市空間として、自動車の活用を念頭に置いた新インフラ整備計画を発表した。中国が、中長期的な観点で世界の自動車メーカーなどが取り組む、ネット空間と自動車の接続や自動運転、電動化など(CASE)に加えて、移動する住居、ビジネス空間としての自動車の実現というより長期的な展開を念頭に、自動車産業の革新を重視していることだ。

 中国の自動販売市場は世界最大の規模を誇る。今後の中国の自動車産業政策は、世界各国の排ガス規制をはじめとする環境対策や、CASEに関するルール策定などに無視できない影響を与えるだろう。