履歴書から消えた
性別記入欄

「今、恋人はいますか」
「何人兄弟姉妹ですか」
「尊敬する人物は誰ですか」

 こうした質問はすべて、自治体などの作成する採用ガイドブックにおいて、「採用活動で聞いてはいけない質問」とされている。ハラスメントや就職差別につながるためだ。だが、就職活動に関わる多くのビジネスパーソンがその事実を知らない。

 19年7月には、JIS規格でも性別記入欄を含む履歴書様式例が削除されている。トランスジェンダーへの配慮の必要性などを背景に、NPO(非営利組織)などが中心となって、全国から1万人以上の署名を集め、経済産業省に提出した結果、日本規格協会がJIS Z 8303『帳票の設計基準』の記載を変更するに至ったのだ。

 仮に今後、企業が独自のエントリーシートに性別欄を設けていたとすると、こうした部分にも、就活生から疑問が呈される可能性が高まるだろう。

 19年にもう一つ、就活に関する問題で大きな話題となったのは、リクルートキャリアによる内定辞退予測情報の不適切な提供だった。就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは、内定者が辞退する可能性を独自に算出し、学生の同意なく企業に販売していた。

 本件でプライバシーの権利侵害などに当たるとして責任を問われたのは、販売元であるリクルートキャリアだけではない。データを購入したトヨタ自動車などの37社も、名指しで批判された上に、個人情報保護委員会から行政指導を受けることとなった。購入する企業にも、相応のリテラシーが求められている時代になった、というわけだ。

 データエコノミーの広がりや人権に関する考え方の変化を受けて、企業の採用活動に求められる対応も刻々と変わっている。この変化を的確に捉えることが何よりも重要だろう。

 そもそも就職活動で選考する学生たちは、それぞれが一人の人間であるということを決して忘れてはならない。仮に企業側が力を持っていたとしても、ぞんざいに扱っていいような存在ではないのだ。かつて就職氷河期にあった、豆をふるいにかけるような感覚で学生を選考する時代は、もう終わった。

 就職活動や就活生への対応を通して見えてくるのは、それぞれの企業が働く人をどう捉えているかという姿勢や価値観そのものだ。そしてリクハラとは、まさにその問題の氷山の一角にすぎない。働く人を大切に扱わない企業は、結局は社員からも学生からも選ばれなくなるだろう。あなたの会社はどうだろうか。あらためて見直してみよう。