初当選を目指すために重要だった
強力なITツール

 選挙運動で最も効果的なのは、有権者と直接会って話す機会を持つことだという。しかも、複数回会うことが有効だ。1000軒を1度回るよりも、300軒を3度回る方がはるかに有効な訪問だというのが原則だ。そして、鈴木氏の事務所には現在約3000人程度の支持者データベースがあるようだ。

 鈴木氏の選挙にとって切り札的な効果を持った武器は、地図データと訪問先のデータ、やりとりの記録を統合して、タブレット端末で見ることができるようにした特製のデータベースだった。

 これがあると、支持者をどのように訪問すると効率的なのかというルートが計画できる。また、そのデータベースには過去の支持者とのやりとりを記録してある。それを参照した後に訪問すると、「この人は私との話を覚えてくれている」と有権者の感動を呼ぶことを可能にする。そんな強力なツールだ。

 人間が顔と名前と以前のやりとりを覚えて安定的に付き合うことができる人数は、「ダンバー数」などと呼ばれ、通常150人程度とされる。千数百人の票をしっかり惹きつけておかなければならない地方議会選挙の候補者にとって、対人的な能力を拡張するツールの必要性と有効性は言うまでもない。

 自動車や生命保険のような「セールス」が有効な分野で、このようなデータベースを整備しているセールスマン個人や会社はあるかもしれないが、選挙にこのようなツールを徹底的に使う話は、初めて聞いた。さすが日本マイクロソフトの出身だ。

 鈴木たつお議員の獲得票数は約2100票だった。

改選を目指す地方議員にとって
日頃の活動も重要

 近年の地方議会はインターネット中継されることもあり、議員としての議会での発言は重要だ。そのためには勉強の時間と機会がいる。

 さらに、鈴木議員はまだ改選を迎えていないが、支持者に対する報告書の送付や報告会の実施、地域のイベントへの参加など、ビジネスでいうところの「顧客メンテナンス」に相当する支持者への継続的な働きかけが重要であることも指摘する。地方議員という職業は、なかなかに大変ではある。

 しかし、テレビの選挙中継に映る当選者の万歳の様子を見るだけでも、選挙は大人も興奮する「アドレナリンの出る、やりがい最大級のイベント」であることが分かる。

 何はともあれ、選挙に勝てなければ話にならない。そして、選挙に勝つためには、「選挙マーケティング」を体系的かつ具体的に語った本書が役に立つ。

 市議会議員といえば、今般首相に就任した菅義偉氏の政治家としてのスタートも横浜市議だった。市議からスタートして首相になる夢もある、ということだ。意欲のある人は、ぜひチャレンジするといい。