インターネットの「知の巨人」、読書猿さん。その圧倒的な知識、教養、ユニークな語り口はネットで評判となり、多くのファンを獲得。新刊の『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せるなど、早くも話題になっています。
この連載では、本書の内容を元にしながら「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に著者が回答します。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

9割の人が知らない「文学部で教わる知識はムダなのか」への正しい解答Photo: Adobe Stock

[質問]
 知らないことを知りたいといろいろな本を読むのですが、自分の中のもう一人の自分が『そんなもの読んでどうするの? 生活の足しにもならないし、もっと実利に結びついたものを読みなよ』ともっともらしく警告してきます。一理あるとは思うのですが、それでも生活の足しにならないような本を読んでいたいんです。読書猿さんにはそのようなことありませんか?

役に立たない知識はない、役に立たせない人がいるだけ

[読書猿の解答]
 私は一応実用書というジャンルの本を書いたのですが、その素材を世間では「生活の足しにならない」と指弾される人文学から得ました。役に立たない知識があるのでなく、その知識を役に立たせない人がいるだけです。

 知識の総体は、その外周を現実と接するネットワークです。現実から見て奥底にあるように見える抽象的な知識、例えば論理学の知識は、奥底近くにある分だけより一層様々な知識と結びついています。このように直接に現実に接していなくても、間接的にはより多くの現実と関わるような知識もあります。

 現実に接してないからといって奥の方にある知識を無くしてしまったら、より広範な知識が傷つくような知識があるのです。その意味で間接関係まで考えれば、すべての知識が現実と接しているのであり、直接あるいは間接的に役に立ち得るのです。

 こうした知識相互の関係を考え、「俺は使わないから○○の知識は必要ない」などというテロ行為から知識を保守することも、間接的には役に立っており、重要な仕事であることをご理解いただけると思います。