「演劇も舞踊も、生身の人間が触れ合うことで生み出される芸術です。そして、観客や聴衆と空間を共有することでしか得られない感覚を手に入れることが上演実習の大きな目的の一つです。それをPCの画面越しに置き換えたとき、何をどこまでできるのかというのは、まったくの手探りで進めるしかありませんでした」

 学部に在籍する学生たちは、実家暮らし、一人暮らし、はたまた下宿住まいなど、生活環境はそれぞれ異なる。大声を出すとご近所からクレームが来るので発声練習ができない、身体を動かしたくても壁やロフトにぶつかるなど、実技のオンライン授業ならではの問題に数多く直面した。そうした中で「できること」を探していった。

「芝居の呼吸法や、身体の使い方を、パワーポイントで解説しながら学生たちにやってもらうなど、基礎的なトレーニングに重点を置いて取り組みました。芝居の台本の読み合わせをする際は、トークルームをメインキャストとアンサンブルキャストに分けて、稽古に無駄が生じないようにするなど、オンラインツールをフル活用しました」

 それでも、どうにもできないのが舞台装置や照明、音響などのスタッフワークだ。

「照明や大道具は座学の勉強では限界があります。実技の授業を受けずに現場に出ていきなり照明機材を吊るせ、金づちやインパクトドライバーを持てと言っても無理です。事故につながる危険性もあります。こればかりは、対面授業が始まるまで、待つしかありません」

対面授業に踏み切れない
総合大学のジレンマ

 もちろん、こうしたケースは玉川大学に限った話ではなく、どこの芸術系大学も同じだ。しかし、対応は各大学の規模によっても異なる。

 多摩美術大学では「6月22日(月)より、段階的な面接指導または施設利用を開始」というアナウンスが出された。また、桐朋学園芸術短期大学では、5月下旬時点で「首都圏の緊急事態宣言解除に伴い、6月より段階的に対面型授業を開始」と発表し、以降、感染拡大防止に努めつつ、対面授業を開講したという。いずれも早い時点で、段階的な対面授業を実施したことになる。

 芸術を専門に扱う単科大学の場合、開講しないことには、大学の運営そのものが危ぶまれる。「実技もできる」ではなく、「実技ができる」大学だからこそ、リスクを抱えながらも早期に対面授業に踏み切ったという背景がある。

 そのなかで玉川大学は、10月1日から「遠隔授業を基本としながら、一部で対面授業」を行うと発表したわけだが、ここに来るまでやや時間がかかったのは、幼稚園から大学まである広大な「総合大学」という学校そのものの性質にある。