なお、今回年収が500万円を下回った企業は100社中47社だった。それらの企業について、業種別の傾向を確認しておこう。500万円を下回った企業が最も多かったのは小売業で17社(17社の年収の平均値は425.1万円)、次いでサービス業で9社(同439.1万円)となった。

 小売業には上位10位にランクインした3社をはじめ、飲食店チェーンが目立って多い。また、業績と低年収に強い相関関係があるとは必ずしも言えないが、外食以外の顔ぶれを見ると、構造不況業種や、流通の変化などに伴う過当競争に晒されている業種の企業が目立つ。たとえば、複合書店を運営するヴィレッジヴァンガードコーポレーション(13位/414.7万円)、食品スーパーなどを展開するアオキスーパー(36位/468.0万円)、スポーツ用品のアルペン(45位/493.9万円)などだ。

 サービス業では、学習塾運営のクリップコーポレーション(6位/393.8万円)、結婚式場運営のブラス(14位/414.9万円)、ビジネスホテル運営のワシントンホテル(16位/419.6万円)など、少子化、晩婚・非婚化、外国人旅行客の減少といった人口動態の変化に影響を受けそうな業種の企業が目立つ。こうした変化は都市部で顕著に見られるものだが、名古屋という大都市を擁する愛知県も例外ではないのかもしれない。小売・サービス業にとっては、足元でコロナ禍の影響も小さくなかろう。

大手製造業が左うちわで
小売・サービス業はサバイバル

 一方、本社所在地の市町村別に集計すると、名古屋市に拠点を置く企業は33社で最も多く、安城市と小牧市の2社がそれに続く。さらに細かく見ると、名古屋市の中核を成す中区をはじめ、名古屋駅西口付近の中村区、商業地域である千種区など、好条件の立地に本社を構える企業も多い。小売、サービス業が多いことから、消費経済の中心地に拠点を構える企業が多いことはうなずけるが、それだけで事業が成長を続け、従業員の給料を増やせるとは限らないところが、ビジネスの厳しさだろう。

 前回の「年収が高い企業ランキング2020【愛知県・全100社完全版】」では、トヨタ自動車系列をはじめ、メーカー各社がランキング上位に名を連ねた。翻って、今回の「低年収ランキング」においては、平均年収500万円未満の製造業は10社に満たない。また、それらの多くは社員数が100~200人台の中小企業のため、従業員の平均年収が低いのは当然とも言える。

 大手を中心とした製造業の社員は左うちわで、小売・サービス業の社員がサバイバルを繰り広げる――。「ものづくり王国」愛知県の光と影が見えるようだ。

(ダイヤモンド編集部 副編集長 小尾拓也)