人生の分岐点で、
お互いのサポートを得られない悲劇
夫婦が同じ夢の実現に向かって目標を共有する上でも、うまくいく夫婦とダメになる夫婦には違いがあります。お互いが歩み寄りながら、相手のサポートを上手に受けて前進できる人と、押し付けや強要によってサポートどころか計画そのものまで壊してしまう人がいるのです。
起業を夢見ていたBさんは、誰もが知っている大手企業に勤務するサラリーマンで、奥さんとは20代で職場結婚をしました。奥さんは非常に優秀な庶務で、気が利く上に仕事が早くて正確、人事異動のたびにマネジャー間で争奪戦になるほどの逸材でした。
奥さんもBさんの独立志向を頼もしいと思っていましたし、将来、起業するという夢を二人で追いかけようと考え、恋愛結婚しました。
しかし、30代になって創業資金の目途がかったある日、居酒屋を出したいと奥さんに打ち明けたところ、大反対され離婚してしまったのです。起業に協力的だった奥さんでしたが、まさかBさんが居酒屋で独立しようとは思ってもいなかったようです。
今の仕事は居酒屋とはまったく異なる業種で、プロでさえ3年後の生存率が3割、10年後の生存率が1割といわれる飲食業の世界に、まったくの素人が手を出してうまくいくはずがないと奥さんは大反対したのです。
Bさんのビジネスプランにどこまで成功する可能性があったのかはわかりませんが、問題は成功率ではありません。Bさんからみれば、一世一代の勝負を理解してくれない奥さんへの不満はピークとなり、その後の人生設計を狂わすはめになりました。
一方の奥さんにとっても、仕事も家庭も順風満帆で理想どおりの結婚生活を送れており、しかも、いずれ夫が独立する際は家庭も仕事もしっかり支える覚悟ができていたにもかかわらず、夫が託した夢が居酒屋という決断だったことで人生設計を狂わせてしまいました。
二人は話し合い、結果的に居酒屋経営という夢はあきらめたのですが、ここではじめてお互いのビジョンの食い違いというものに気づいたといいます。
Bさんも居酒屋経営という夢を泣く泣くあきらめたのですが、その後、Bさんにとっては自分に理解のない妻、奥さんにとっては、自分のことばかりで家族を顧みない夫というギャップが生まれてしまったそうです。そしてその後、お互いにそのミゾを埋めることができずに、最終的には結婚生活にピリオドを打ってしまったのです。