結婚は自由を奪い、
目標を成し遂げられなくする邪魔物か?
結婚についてよく言われることに、「束縛の制度」「人生の墓場」といった言い回しがあります。確かに結婚には、犠牲と幸福のトレードオフである部分はあります。
しかし、独身の人がよく言う「自分の人生を何より大切にしているから、犠牲になりたくない」「成し遂げたいことがあるから結婚は邪魔もの」というのは本当でしょうか。
面白いことに、実際に結婚を後悔している先人の中では、こうした理由の後悔はほとんどありませんでした。それなりの犠牲は強いられていたけど、後悔自体はそこにはないということなのです。
これは、結婚というものが、経験する前と後ではだいぶ印象が違うものであり、結婚自体が犠牲を生み出すのではなく、相手との関係構築の過程や、やり取りによって後悔が生まれていることを表しています。
つまり、お互いのすり合わせや修正によって乗り越えられる人と、それをうまくできずに乗り越えられない人がいるというのが本音であって、結婚することで自分がなくなるとか、何かを達成できなくなるということではないようです。
事を成し遂げられる人は、結婚を上手にマネジメントし、相手のサポートも手にしながら次なるステージへと進化しています。むしろ、原動力に転換しているのです。本人がどれだけ真剣に結婚生活にコミットしているか、そこに大きな違いがあるようです。
さらに、結婚がもたらす苦難とは別に、結婚することで、結婚前では想像できなかった飛躍を感じている人がいることも、1万人インタビューからわかりました。
仕事でもそうですが、自分の中で完結できてしまうものは結構多いものです。ですが、そこにはジャンプするような成長はありません。限界があったと気づくのは往々にして限界を超えた後なので、ジャンプした経験がないとなかなかわかりませんが、その気づきを生み出すのは結婚生活が一番大きいのではないでしょうか。
それは、一人なら簡単に逃げてしまえることが、結婚したことによって、「逃げられない」状況に変わるからです。仕事でも人付き合いでも、自分の価値観を覆すことや、どうしようもないような苛立ちというのは生まれます。けれど、そこから逃げるという選択肢がある限り、ジャンプ台には立てません。
恋愛では、面倒になれば逃げられますが、結婚では絶対に逃げられないという状況があるのです。だから、問題と真剣に向き合わざるを得なくなる。すると、明らかに昔と比べて手にしているものが多いことに気づく、というのは頻繁に起こります。
逃げられないから、その覚悟で自分の限界に挑まざるを得ない。その結果、人として成長し、別のステージへとジャンプするというのが、結婚による「ストレッチ作用」です。
一人のときには二つの目で自分を振り返っていたのが、結婚することによって目の数は四つに増えます。その増加分が時にコーチやチームメイトの目の役割を果たし、より良い方向へ前進できたり、モチベーションを高めることができるのです。
相手から直接的なアドバイスを受けなくても、目標へ向き合う情熱の熱量は一人より二人のほうが時に増すことを、多くの先人たちが語っています。何かを成し遂げようとするとき、同じ目標を共有できる人がいるほうが、ずっと実現度は高いし、自分以外のために努力するほうが幸福感は高いと、結婚でレバレッジをかけられた先人たちは教えてくれているのです。