ダイヤモンド社が就活生に聞いた「就職したい業種ランキング」では、商社に次いで2位に選ばれるなど、人気が高いIT業界。しかし、「IT業界、システムエンジニア(SE)の仕事はブラック」だと、入社を反対する就活生の親が今も少なくないという。そこで今回は、IT業界の変遷とともに、親と子がもめないためにも知っておきたい業界の現状を紹介しよう。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)
きつい、帰れない、給料安い
「IT業界=ブラック」だった時代も
就活生の親世代が就職活動をしていた1990年代は、今では当たり前のインターネットがようやく普及し始めたという時代だった。95年にマイクロソフトからWindows95が発売されると、発売4日で販売数は20万本を超えるなど大ヒット。コンピューターやインターネットが、ごく一部のマニアックな人たちから広く一般に広まったのを記憶している人も多いのではないか。
そんな90年代のIT業界は、企業向けの情報システムやWebサイト上で利用されるサービスを開発・運用する「情報処理系企業」、すなわち「システムインテグレーター(SIer)」と呼ばれる企業が大半を占めていた。親世代は「IT業界の仕事」というと、SIerをイメージする人が少なくないかもしれない。
当時の大手SIerが担っていたのは、顧客のオーダーメイドのシステムを開発する受託開発ばかり。オーダーメイドの受託開発は多くの人手を要するが、開発環境は大手を頂点とした多重下請けによるピラミッド構造になっており、末端のシステムエンジニアが低賃金で実装作業に追われる状況が生まれていた。
確かに1990年代後半から2000年代初頭のバブル崩壊後にIT業界は急激に伸長して、日本経済を立ち直らせる花形産業としてもてはやされたが、実際はこうして低賃金で過酷な長時間労働を行う労働者によって支えられていたにすぎなかったのだ。
長時間労働による過労死、うつ病などの問題も大きく報道され、「IT業界=ブラック」というイメージが浸透。2000年代には労働環境の厳しさを示す言葉として「7K」(きつい、帰れない、給料が安い、規則が厳しい、休暇がとれない、化粧がのらない、結婚できない)と揶揄されるなど、新卒学生からの人気が低迷してIT業界離れが進んだ。