しかも「産後うつ」の可能性があるとされた母親のうちおよそ3分の2が、自身が危険な状態にあることを認識できていないことも判明している。

 つまり、1歳未満の赤ちゃんがいる母親のほぼ4人に1人が「産後うつ」を発症している可能性があり、そのうち3分の2は自身が危険な状態にあることを認識できていないため、周囲に助けを求めたり適切な治療を受けたりしないまま症状を深刻化させている恐れがある――。これはもう、待ったなしで対策を講じるべき非常事態だ。

 そんな中、テレビでは、関連ニュースの報道をするたびに、1人で抱え込まず信頼できる人に話をするよう促し、「相談電話などの活用を」といったメッセージも同時に流しているが、3分の2が「自身が危険な状態にあることを認識できていない」のだとしたら、このメッセージは当事者の心には届かない。どうしたらいいのだろう。

「相談しましょう」と言われても
援助者の協力がないと受診に至りにくい

小野和哉医師
聖マリアンナ医科大学神経精神科特任教授の小野和哉医師

 まずは「産後うつ」を理解するため、聖マリアンナ医科大学神経精神科特任教授の小野和哉医師に話を聞いた。

――「産後うつ」とはどのような病気なのでしょうか。

 産後の身体、精神的な要因によって誘発されやすいうつ病の1種です。正式な呼称は、「産褥期(さんじょくき)うつ病(産後うつ病)」です。類似の言葉にマタニティーブルーズというものがあり、こちらは出産直後に現れるもので、分娩後3~10日頃に発症し一過性で短期間に改善する、気分の低下、不安、涙もろさ、不眠、情緒および認知の障害で、ほとんどが自然に治癒します。

 出産はどこの国でもおめでたい吉事ではありますので、その後にうつ的になっても、養育の負担を放棄することは、周囲からは容易にみとめられることではありません。そうした社会的負荷が産後うつ病への要因になるのかもしれません。

――自殺とうつ病は深く関係しているといわれますが、「産後うつ」と一般的な「うつ病」の違いは。

 症状は基本同じです。「産後うつ」は産後数週間後から数カ月で発症します。産後の生活変化などの環境要因と、妊娠中に増加した性ホルモンの変化が関連して発症することからこのように呼ばれます。