スウェーデン式休憩術「フィーカ」

 シンクロナイズの力が発揮されると、ストレスレベルが下がっただけでなく、有益で生産的なアイデアが交わされるようになった。

「ああ、同じような電話を受けたことがあるわ。そのときはこんなふうに対応したの。試してみたらどう?」といった会話を通じて、メンバーはアドバイスを与えあうことで、直面している問題を解決できるようになっていった。

 ウェイバーらの試算によれば、23パーセントの生産性の向上は、オペレーターが10年分の経験を積むことに相当する。

 もう1つ、とても重要なポイントがある。それは、これらのコミュニケーションが自発的なものだったということだ。

 ウェイバーは、チームミーティングではこれと同じレベルの同期(あるいは、ウェイバーがよく口にする「結束力」)は達成できないと指摘する。

 オペレーターたちの会話は自然発生的なものだったからこそうまくいったのだ。

 コールセンターのエピソードからは、あらゆる職場に当てはまる創造性に関する教訓が得られる。

 同僚からのアドバイスを参考にして苦情電話に対処するためのより良い方法を見つけたオペレーターは、創造的な思考のひらめきを得ていた。

 人は創造性という言葉を耳にすると身構えがちだが、実際には役所であれスーパーマーケットであれ法律事務所であれコールセンターであれ、創造性とは目の前の仕事をうまく行う方法を見つけることなのだ。

 休憩をみんなで一緒にとると大きなメリットがあると伝えても、スウェーデン人は驚かないだろう。

 この国では、「フィーカ」の効果が昔からよく知られてきた。フィーカは「コーヒーを飲みながらケーキなどの甘い物を食べること」という意味として理解されることが多く、15分間程度の短いコーヒーブレイクの形がとられることが多い。だけど、それはカフェインと糖分をとること以上に精神的なものでもある。

 ボルボの工場のような企業もフィーカのために生産を一時停止し、リフレッシュする時間をとっている。

 IKEAのウェブサイトでは「フィーカは単なるコーヒーブレイクではなく、社員同士が情報を交換し、結びつき、寛ぐための時間です。

 この時間に、最高のアイデアや決定がよく起こります」と説明されている。フィーカは同僚と一緒にとるだけではなく、1人で気楽に楽しむこともできる。

 スウェーデン人はフィーカを、いったんペースを落とし、物事を振り返る時間だと考えている。

 現代版のフィーカとして、地元のコーヒーショップまで社員同士がおしゃべりをしながら歩くという方法をとっているスウェーデン企業も多い。

 コーヒー休憩をとることに罪悪感を覚える人もいる。給湯室で飲み物をつくって席に戻るだけなら問題ないが、15分も寛ぐと、怠けているような気分になるのだ。

 でも、フィーカは、気分転換し、ひらめきをもたらし、元気を回復するための素晴らしい方法だ。

 みんなで休憩をとることでメリットがあるのはコールセンターだけではない。チームで午後のお茶の時間をとる、近くのコーヒーショップまで話しながら歩く、どんな方法であれ、フィーカはチームを同期させるための良い方法になる。