イギリスからの翻訳書『Google・YouTube・Twitterで働いた僕がまとめたワークハック大全』が本年9月に発売された。コロナ禍で働き方が見直される中で、有益なアドバイスが満載な1冊だ。著者のブルース・デイズリー氏は、Google、YouTube、Twitterなどで要職を歴任し、「メディアの中で最も才能のある人物の1人」とも称されている。本書は、ダニエル・ピンク、ジャック・ドーシーなど著名人からの絶賛もあって注目を集め、現在18ヵ国での刊行がすでに決定している世界的なベストセラーだ。イギリスでは、「マネジメント・ブック・オブ・ザ・イヤー 2020」の最終候補作にノミネートされるなど、内容面での評価も非常に高い。本連載では、そんな大注目の1冊のエッセンスをお伝えしていく。

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どうやって「民主的な話しあい」を起こすか?

 数年前、カーネギーメロン大学、MIT、ユニオンカレッジのチームが、会議の参加者には測定可能な「集団的知性」があるかどうかについての検証を試みた。

 約700人を小グループに分け、思考のさまざまな側面を測定するための課題を与えた。創造的な思考が問われるものや、論理的なもの、交渉をさせるものもあった。

 その結果、重要な発見が2つあった。

 1つは、成績が良かったグループにはすべての課題で良い成績を上げる傾向があり、成績が悪かったグループにはすべての課題で成績が悪い傾向があったこと。

 もう1つは、個人の知性がグループのパフォーマンスには直接的な影響を与えなかったことだ。

 際立って頭の良い人がメンバーに含まれていても、それだけではグループ全体の成功は保証されなかった。

 重要だったのは、メンバー同士のコミュニケーションの方法だった。

 失敗したグループは、1人か2人のメンバーが主導権を握っていたが、成功したグループは民主的で、全員が同程度に意見を述べていた。

 研究者は「発言の順番が平等な方法で決められていた」と観察している。研究を率いたアニタ・ウィリアムズ・ウーリーはこう言っている。

 「全員が話す機会を得ていたグループの成績は良かったが、1人または限られた数のメンバーのみが発言しているグループでは集団的知性が発揮されていなかった。平等に発言するグループには高い集団的知性が見られた。全員が発言することで多角的な意見が得られ、それに基づいて全員で考察をするからだ」。

 成功したグループは「社会的感受性」が高かった。すなわち、メンバーがお互いの非言語的な反応をうまく読み、相手の考えを察知し、それにあわせて行動していた。

 自信満々のメンバーが他人を威圧するような発言をしたり、萎縮したメンバーが発言を控えることで良いアイデアが失われたりするリスクはなかった。

 個人の「社会的感受性」を実験で評価する方法には、自閉症をスクリーニングするために開発されたテストを用いる場合があった。自閉症の人は、他人の表情から感情を読み取るのが難しいことが多い。

 そこで臨床心理学者のサイモン・バロン=コーエンは、まなざしで相手の感情を読み取るテスト(Reading the Mind in the Eyes)を考案した。

 これは1990年代の雑誌に使われていた人物の目元の写真を数十枚見せ、各被験者にその人物の感情の状態を評価するよう求めるというものだ。インターネットでも試すことができるが、以下にいくつか例を挙げておく。

 このテストでは、提示された4つの言葉の中から、写真の人物の感情を最もよく表すと思われるものを選択する。ウーリーらの実験によると、被験者が各画像に示された感情を直感的に理解する能力は、集団的知性に貢献する能力と強い相関があることがわかった。

 これは「認知心理学の長年の考察によって明らかになった、他者の視線を解釈し、相手の反応を予測し、微妙な手がかりに基づいて他者の考えや感情を察知する、一般的な能力」だとウーリーは言う。

 この直感的な能力は男性よりも女性のほうが優れていることにも注目すべきだ。集団的知性のテストでは、成績がトップクラスのグループには必ずといっていいほど多くの女性が含まれている。

 女性が半分以上を占めるグループでは際立ってスコアが高くなる。逆に女性が少数派のときは、男性によって議論から締め出される傾向があった。

 「女性は多数派のとき、ほぼ全員が議論に参加するようになる」とウーリーは言う。

 「そのとき男性は少数派だが、それでも議論に参加する傾向がある。つまりジェンダー構成が多様で、かつ女性のほうがわずかに人数が多いグループでは、参加レベルが最も高くなる傾向がある」。