なぜ、優秀な経営者ほど、
生産性が下がっていることに気づかないのか?
──「しない」選択をすると、その分、売上が落ちるなど、経営的にマイナスになる部分が出てくると思うのですが、それでも「しない経営」に舵を切った理由を教えてください。
土屋:日本の経営者はみんな真面目ですから、できっこないのに「前年比110%」という目標を掲げ、社長が社員にプレッシャーを与えてしまう。
でも、死ぬほど頑張って四半期売上を達成しても、長期的な成長がなければ意味がない。
小手先で売上が上がることより、自分の頭で考える社員がどれだけ育ったか? お客様の評判はいいか? と、ロングスパンで考えたほうがいい。
だから、何かを「しない」決断をしてみる。
「あれもこれもやろう」だと、何もできない。
優秀な経営者ほど成長意欲が強いので、社員にも自分にもプレッシャーをかけますが、それが空回りすることが多い。
日本のホワイトカラーの生産性は世界的に見ても停滞しています。
上司から言われたら、部下はすぐにいろいろなことをやるでしょう。
実は、それが結果的に生産性の低下につながっていることを認識すべきです。
「なぜこんなに頑張っているのに、給料が上がらないんだ」と悩む日本のビジネスパーソンは多いですが、それは余計な仕事をやっているからです。
自分の一番重要な仕事を捨て、上司から言われたつまらない仕事を先にやったり、休んだ人の仕事をカバーしたりする。これでは生産性が上がるはずがない。
日々やるべき仕事が決まっていて、余計な仕事を一切拒否できるのが世界の常識。日本以外の国ではホワイトカラーの生産性も向上して、待遇も改善されている。
「しない経営」は世界では常識です。
ただ、その「しない」を選択する以上、何かしらを犠牲にしなければなりません。
ネット通販でも、「なんとしても翌日に届けよう」とするからみんな残業してしまう。
ワークマンでは、「ならば4日後でもいいんじゃないか」という結論に至りました。
Amazonと張り合う必要はないと判断したからです。
Amazonに絶対負けない戦略は本書に詳しく書きました。
思い込みで何でもやろうとするのではなく、絶対に勝てる「ポジション取り」をすることが重要で、それ以外のいらないものは徹底的に捨てるべきなんです。
そうやって考え方を変えるだけで、個人が変わり、会社も変わっていくと思います。