社員が育たない会社に、将来はない
──土屋さんは、「しない経営」を徹底するために、どのように目標設定をしていますか?
土屋:私は6年間でたった一つのことしかやりませんでした。
あれもこれも心配なので3つ目標を設定すると、3つともダメになるからです。
経営者としての私の目標は「客層拡大」のみ。
6年間でたったこれだけの目標に集中してきたのです。
これを実現する手段として、「エクセル経営」「しない経営」との両輪があります。
今回、初めて書籍を執筆し、自分自身の経営戦略を言語化する中で、「目標を絞り込んで、時間の期限を厳しくしなければ目標は実現できる」という思いを深めました。
逆に、厳しすぎる期限や数多くの目標に直面すると、優秀な社員から順にあきらめてしまうと気がつきました。
──今回の初めての書籍でも、社員に気持ちよく働いてもらうための戦略がぎっしりと書かれていました。この本を経営や日々の仕事に生かそうとしている経営者やビジネスパーソンも多いと思います。社員の成長を促し、社内生産性をアップさせるはじめの一歩として、何から行動に移すべきでしょうか。
土屋:いくら会社がビジョンを示そうと、社員が同意し、気持ちよく働けなければ結果を出すことはできません。
重要なのは、企業風土を変えることです。
私はワークマン社員の能力に心から敬意を払っています。
彼らの給与は安すぎると判断し、社内改革として、まず、給与のベースアップを先に約束しました。
「人は変わり、成長する」という確信があるので、ワークマンは経営幹部クラスを外部から一切起用しません。
社員が育たない会社に、将来はないからです。
ですから、改革志向のある経営者には、本書の中でも特に「しない経営」の部分を読んでいただきたいです。
優秀な経営者ほど、社員に課題を与えすぎて、逆に社員の足を引っ張る可能性があります。よかれと思ったり、教育だと思ったりしてやっていることが、実は逆効果になって生産性を下げているかもしれないのです。
また、トップダウン型経営者は、社員が自分の頭で考えることを抑制している場合があります。
社員の能力以上に会社は成長しません。
社員が自分の頭で考えなければ成長はないのです。
本書にある「エクセル経営」とは、現場の経営改革そのものです。
社員が上下の隔てなく、平等にデータや数字、ファクトで議論する「草の根の改革」なのです。この本でも紹介していますが、これにより社員の多くが劇的に人生を変えました。
朝の元気な挨拶も、他の社員の考える仕事を中断するので邪魔です。
帰り際の「お先に」は定時に帰らないほうが悪いので、黙って帰ればいい。
耳の痛い話が多く、経営者には「そうはいっても」という思いがあるかもしれません。
本書にあることは、「常識」と反することが多いのですが、少しずつでも実験してみていただけたらと思います。
ps.「しない経営」の極意についてはこちらのサイトでも掲載していますので、ぜひご覧ください。
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