このままでは経営破綻も
苦境に喘ぐローカル線の「今」
今年は、正月気分が抜けない頃から、日本をはじめ世界中が新型コロナウイルスのために混沌としている。コロナウイルスは多くの人を呑み込み、世界中の経済を、そして人々の生活さえも一変させてしまった。
私の専門分野は、鉄道だ。しかしその鉄道も、コロナ禍の中でもがき苦しんでいる。特に地方のいわゆるローカル線と呼ばれる路線は、今まさに存続の危機に立たされているところさえ多い。ある鉄道会社では、社長自ら「年末には経営破綻」と公言しているほど、その被害は計り知れない。
そこで、ご批判の向きもあろうが、ここはひとつ、マスク・手洗い・咳エチケットなどの徹底を自分に課し、ローカル線と経済の救済、コロナ自粛で疲れた心のリフレッシュのために、「ローカル線の旅」へと出かけてみてはどうだろうか。地方は都内ほど「密」になる機会も多くはないだろうし、ましてローカル線ならばなおのことだ。
本稿が、ローカル線の旅へ出るきっかけになればと、現地の実況などを記させていただく。ルポの「続き」を執筆するのは、皆様にお願いしたい。
「天下の険」を走る箱根登山鉄道
7月下旬にようやく運転再開
今回、取り上げたいのは箱根登山鉄道である。
「箱根の山は天下の険……」という歌があるが、その険を日本の鉄道としては最急勾配となる80パーミル(1000メートル走ると高低差が80メートルになる値)で走り切るシェルパが、箱根登山鉄道だ。
話はコロナ禍よりも以前、2019年10月の台風19号まで遡る。この台風は、各地に非常に大きな被害の爪痕を残した。政府から「令和元年東日本台風」と命名され、激甚災害などに指定されたもので、尋常ではない大雨強風を伴う巨大な台風であった。
鉄道でも各地で計画運休などが実施されたが、施設を中心に大きな被害が発生し、1年近く経つ現在でも不通区間が生じている線区さえある。神奈川県の箱根町では、1日の降雨量としては国内最大の922.5ミリを記録するほどであった。