一方で、V字回復したパナソニックやシャープの経営は素晴らしいともてはやされたのである。しかし、考えてほしい。利益とは、売り上げから支出を引いたものである。支出には将来の事業への投資分も含まれる。具体的にいえば、当時のパナソニックやシャープは研究開発投資を削減する方向に動いた。一方、ソニーの平井社長は、エレクトロニクス事業の選択は行ったものの、残した事業の研究開発投資は赤字の中でも続けてきたのである。

 研究開発は未来への収益源である。今期の経営数値には表れないが、確実に将来の経営を左右するものである。そうした未来の収益源を減らせば、見かけ上、経営はV字回復する。たいていの場合、企業のV字回復は将来の利益の先取りでしかない。楠見パナソニックに求められるのは、短期的での見かけ上のV字回復ではなく、長期的なパナソニックの組織能力の向上であり、将来への投資を疎かにしない経営であろう。

素晴らしい技術や経営資源を使って
グローバルでどうありたいのか

 最後に、パナソニックとソニーの両社に苦言を呈するとしよう。経営を建て直した後、パナソニックは数年後かもしれないが、ソニーは今の課題として、今後何をしてどのようにグローバルな競争の中で戦っていくのか、そのビジョンを明確に示していくことが、まだ不十分かもしれない。

 パナソニックもソニーも、日本を代表する大企業である。しかしグローバルで見れば、時価総額は決して上位に食い込んではいない。とはいえ、両社には優れた技術の蓄積がある。パナソニックといえば、松下幸之助の商売のイメージが強いかもしれないが、高い技術開発力を持ち、他者にない技術的優位性をいくつも持っている会社である。

 これらの技術や経営資源を使って、パナソニックやソニーは世界でどうありたいのか、トップがもっと明確に示してほしい。両社とも新規事業創出の組織をつくり、ユニークな事業をいくつも生み出し始めているが、どれもグローバルに両社を牽引していく事業に育つ道筋は見えていない。

 ソニーの場合、「動くもの」というところにヒントがあるのかもしれない。aiboの復活やEVの開発、最近ではドローンの事業への参入など、エレクトロニクスから、古い言い方ではメカトロニクスの分野で、新しいものを見せ始めている。