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この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
ケアレスミスはどうやったらなくせるでしょうか。
たとえば、今日数学の勉強をしていて発覚したミスは以下のとおりです。(1)転記ミス(計算過程で行が変わったときに+と-を書き間違えた)(2)筆算ミス(引き算で繰り下がりを間違えた。足し算で検算したのに今度は繰り上がりを間違えた)(3)謎の暗算ミス(3の4乗を84と計算していた。4乗の4に引っ張られた??)…少なくとも同じミスをしないためには、何をしたら良いでしょうか。あるいは、ミスはするものという前提で、見直しや検算で効率よくミスを発見できる方法はありますでしょうか。
まずは暗算をやめてみてください
[読書猿の回答]
科学的にいえば、同じミスを避けるのでなく、同じミスが生じるにはどんな条件が必要かを明らかにして始めて有効な手が打てます。条件が明らかでないまま取られる対策はすべて当てずっぽうです。
当てずっぽうを続けると、ケアレスミスという見当てが正しいなら、ミスが生じた箇所で注意という認知資源が不足したことになります。注意という認知資源は有限です。この限りある資源をなるべく節約して使う(余計なことに消費しない)ことが、ケアレスミスを避ける一般的ルールになります。
例えばレンガ算という方法は、できるだけワーキングメモリを節約しようとする筆算法で、筆算に最後に残った暗算領域「繰り上がり」を最小化する工夫です。
各桁の掛け算の答えをそのまま記入できるので、計算過程を振り返りやすいです。
繰り上がりは最後にまとめて処理しますが、繰り上がり処理についてもレンガ筆算を使うことができます。
暗算は高速で紙も消費しないのですが、「暗」算だけにその過程を後から振り返ることが難しい。
例えばご質問の「謎の暗算ミス」ですが、おそらく3の4乗=81と4の3乗=64との混線だと思われますが、過程が残っていないので、当てずっぽうの域を出ません。
式を展開するときも、対応する項を必ず揃えて書く(少しでも離れていないところに書く)程度のことだけでも違ってきます。
とにかく頭の中に仮置きする項目を減らすことが、認知資源の消費を抑え、ケアレスミスの抑制につながります。