なぜ日本企業の韓国への
投資は増えてるのか

 日本企業の韓国への投資が増えている。先日、資料を見ていて気付いたことだ。なぜ、今の時点で韓国への投資が増えているのだろうか。いろいろな要因が考えられるが、私の目を引いたのは東レ、帝人、住友化学といった企業の投資が増えていることだ。

 東レや住友化学は、韓国の工場で生産した製品を誰に売るだろうか。詳しく検証したわけではないが、すぐに思い浮かぶのは、サムスン、LG、現代などの韓国企業である。韓国企業も日本の優秀な素材を求めているはずだ。彼らの急速な成長を考えれば、日本の素材メーカーにとっても、これは世界シェアを拡大する絶好のチャンスに違いない。

 化学や鉄鋼などの素材メーカーは、日本のものづくりを底辺で支える黒子のような存在であった。日本の素材の品質は素晴らしい。そうした素材を利用できるからこそ、日本の自動車やエレクトロニクスは、世界で有利な競争を進めることができた。

 素材メーカーは、ある意味では非常に国内志向が強い存在であった。日本国内の大きな市場が経営の基盤でもあった。もちろん素材メーカーも海外に目を向けていたことは事実だが、設備のコストを考えると、国内市場にその多くを頼らざるをえなかった。

 こうした状況は大きく変わりつつある。ものづくりが日本国内からアジアの近隣諸国に広がるなかで、日本国内市場だけで素材メーカーが生き残ることは難しいからだ。前々回グラビティ・モデルの話をしたが、素材の分野でも距離は重要である。遠方の欧米市場で素材の売上を拡大させるのは難しいが、距離の近いアジアで販売を拡大することは十分に考えられる。

 欧米にはすでに、強力な競合会社が多く存在する。アジアでは、まだ地場の素材メーカーはそれほど育っていない。日本の素材メーカーの有力な顧客であった日本企業がアジアでの展開を拡大させれば、それへの対応ということでもアジアへの輸出や現地での生産を強化せざるをえない。