「自粛」の効果を実証、接触率に所得格差が影響Photo:PIXTA

 第3波真っただ中だ。ただ、「敵」の正体が全く見えなかった昨年末~春先より状況はマシ。もうひと踏ん張りしよう。

 10月末に報告された東京大学生産技術研究所の研究グループの調査では、一人ひとりの行動が「防疫」につながることが実証された。

 研究者らは、ヤフー株式会社の協力とスマートフォン(スマホ)ユーザー(およそ20万人)の同意を得て、スマホの位置情報を解析。100メートル四方のグリッド内に30分以上滞在している利用者数の平均値を「接触数」と定義し、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行前後で接触率を比較している。

 その結果、緊急事態宣言が発令される「以前」の3月第1週時点で、「自宅の外」での接触率は、COVID-19流行前の65%程度に減少。患者の増加とともに接触率は急速に低下し、4月15日時点で平時の30%に達した。

 土日の昼間や通勤ラッシュなど接触ピーク時間にいたっては、平時の20%に低下している。政府の「接触率を普段の8割にまで減らすこと」という目標を4月中旬でほぼ、達成していたことになる。

 首都圏の住民は、4月7日の「緊急事態宣言」に一歩も二歩も先んじて自粛へと行動を切り替えていたわけだ。

 接触率が下がるほど感染が抑えられることも実証されたが、本調査では、感染力を示す実効再生産数は「宣言」以前に底を打っていたことが判明している。

 問題は、厳に自粛できるのは「それなりの所得」の世帯だという点だ。東京都23区内に在住するユーザーに絞って解析した結果、港区など平均課税所得が高い区ほど接触率を減らし感染リスクを封じ込めた一方、平均課税所得が下位の区はそれがかなわなかったことが示されている。

 所得格差は健康・感染格差に直結する。この事実を突きつけられた重みは大きい。同じ船に乗っている以上、誰もが無関係ではいられないのだから。

 非正規雇用や低賃金のエッセンシャルワーカーに生活保障がない「自助」を強いるのは限界だ。今は「公助」が必要なステージだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)