「熱」を伝えるためのツール開発

コロナ禍でも学びを止めなかった「早稲アカ」流の取り組みとはオンデマンド用の授業映像も突貫作業で作成 写真提供:早稲田アカデミー

――まさに皆さんの情熱を感じますが、3つ目にはどのようなことを。

山本 自宅で解答用紙をスマホで撮影してすぐに結果を伝送できる「早稲田アカデミー EAST」という仕組みを取り入れ、先の2つと組み合わせて一気に進めました。生徒・保護者の皆さんからは非常にポジティブに捉えていただけたのかなと思います。

――私もビデオ授業をやるのにZoomがいいのではと思ったのですが、保護者がそれに対応できるかが心配でした。その点はいかがでしたか。

山本 多少、Wi-Fi環境を整えたというご家庭はあったかと思いますが、そこは問題なくスムーズに行けました。Zoomはパソコンかタブレットか、あるいはスマートフォンでも対応可能です。これらのデバイスが何もないご家庭というのは実質的にありませんでした。

――何かボタンを押せば、すっとZoomに入れる工夫もあったとお聞きしていますが。

山本 Zoomが一気にはやりだした時、セキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性が問題になりました。この点に関しては、デフォルトではオフになっている待機室の機能を必ず全部オンにすることでまず対処しました。通常はZoomの初期画面にIDを入力する仕組みですが、同じID番号をずっと使い続けていると記憶され、悪用されたりもしますしね。

 早稲田アカデミーのサイトに、生徒と校舎とで時間割や受講料の支払いといった情報をやりとりするMY PAGEという機能があります。ここに「双方向の時間割はこちら」という情報を載せました。授業の一覧を見てそれをクリックすると、先述の待機室に入ります。必ず顔出しの上、フルネームで参加するので、先生が手元の出席簿を確認して入室を許可する。生徒あるいは保護者はこの2クリックで授業に参加できるため、自分のID番号を全く意識しなくて済むようになりました。

――それは大変なご苦労がありましたね。

山本 最初にIDを使って実施した時の授業数は1800もありました。それらをすべて手作業で、裏でひも付けをしていた期間は正直とても苦しかったです。その後、Zoomの会議室番号と授業とがひも付くロジックを作り、すべて自動的に生成できるようにしました。

――今まで担当の先生全員がZoomで授業をされたわけですか。

山本 そうなんです。基本的に今まで教わっていた先生に教わる。そのことも安心感につながったのかもしれません。

――家賃はかかるわ、人件費は同じだわ、相当大変でしたね(笑)。

山本 それこそ1800コマすべてZoomでという状況だったので、各校舎を見に行くと異様な光景でしたね。生徒が1人もいなくて、先生がみんなタブレットに向かって授業をやっているんです(笑)。