「絶対にリモートでなければならない」ということはない

 新型コロナウイルスの影響で、PCのWeb会議システムなどを使って、リモートで営業活動をしているという人は多いだろう。上述のように、感染を心配して会おうとしない人も少なくない。また、企業のオフィスを訪問して営業しようにも、テレワークでオフィスには誰もいない。このような状況では、営業活動がリモート中心になることは仕方ない。

「人と人が初めて会うとき、直接対面する場合に比べて、リモートではお互いの言いたいことや思いが半分しか伝わらない」と遠藤氏は話す。直接の対面を望まない顧客もいれば、逆に現在でも、直接の対面を希望する顧客もいる。だから、先方が希望するなら、双方が了解した上で対面した方がよいという。初対面で実際に会っておけば、お互いの考え方や性格など、実際に会わないと分からないところまで理解し合える。その上で、2回目以降の商談はリモートにすればよいというわけだ。

 一方で、どうしても直接の対面を拒否する顧客もいる。ここで遠藤氏は、あるIT企業で起きた話を紹介した。そのIT企業では、ある顧客からの見積もり依頼をメールで受け取ったという。顧客はWebサイトを見て、関心を持ってメールを送ったのだが、この企業では見積もり依頼をメールで受け取るというのは初めてだった。担当の営業マンは顧客の意向を確認し、顧客が地方にいるということもあり、リモートで商談を進めた。そして、顧客と一度も会うことなく受注まで漕ぎ着けたという。

 遠藤氏はここで重要なポイントとして、「何度も何度もリモートで商談した」点を挙げた。直接会えば簡単に伝わることが、リモートではなかなか伝わらない。その分、商談の頻度を上げ、回数を重ねることでお互いを理解し、その結果受注に結びついたということだ。

 そして遠藤氏は、直接対面するにしても、リモートで商談するにしても、大切なことは先方の希望に営業が合わせることだと指摘し、「顧客は今来てもらいたいのか、来てもらいたくないのか。どういう情報が欲しいのか、どういう情報は欲しくないのか。そういうことを見極めながら、顧客に営業が合わせてアプローチする必要がある」と語った。