コロナがなくても経済の鈍化は見えていた

――もしコロナがなければ、世界の経済成長は続いていたのでしょうか?

奥野 別にコロナがあろうとなかろうと、経済成長率が鈍化していることは周知の事実です。中国の成長が鈍化した時点で、もう世界の成長というのはある程度低減していくということですね。

そもそも世界の経済の成長とは、新興国が成長することによってドライブされるのです。新興国がエンジンになるんですね。日本がまず朝鮮戦争を通じて大きくなり、その後高度成長を遂げる中で、アメリカものし始めたのが1970年代なわけです。日本はアメリカに抑え込まれて、そこから失われた30年間が始まるわけですけど、その後に成長してきた国が韓国であり、台湾であり、最後に登場したのが中国ですよね。そういう形でどんどん新興国が大きくなることで、世界経済というのは3%、4%の成長をしてきた。そのことからすると、中国がある程度大きくなってしまった今、経済成長が鈍化するのは最初から分かっていたことなんですよね。

次に火が噴くとなると、インドなのかアフリカなのか分かりませんが、あのような莫大な人口を持っているところが先進国化していくということが起これば、次のドライバーとなります。でも今それが見えていない段階である以上、コロナで経済成長が鈍化しているのは確かだと思います。今後「行け行けドンドン」で資産価格が上がるとは思わないほうがいいですね。

運用の世界においても、リスクのないものが世の中に存在するのかと問われればそんなものはありません。注意が必要なのは、一般的にはリスクが低いとされている、例えば債券であるとか、債券を組み入れたバランス型のファンドとか、確かにリスクは低いんですが、今やリターンもほとんどゼロの投資対象です。リスクが低いからいいとか悪いとかの問題じゃなくて、何も生まないので、それを持つくらいなら現金を持っておけばいいと思います。

コロナの時代に求められる人材とは?
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)など。

参考記事
コロナでピンチにある企業がすべきこと