澤田純・NTT社長からの申し出を引き受ける形で、NECがNTTから644億円の出資を受け入れた。NECは旧・電電ファミリーの「長男」的存在である。かつてのようにまた、NTTの“手足”となって生きる決断をしたのか。特集『デジタル貧国の覇者 NTT』(全18回)の#5では、新野隆・NEC社長を直撃した。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
基地局大手の囲い込みを打破し
エリクソン、ノキアのシェア奪う
――NTTの澤田純社長は京都大学アメリカンフットボール部の1年後輩ですね。両社長が旧知の間柄だったことがNTTからの出資受け入れにも影響しましたか。
知らない人と交渉するのとは全然違うと思います。
京大アメフト部の上下関係は厳しくないのです。1年生は全員素人という競技なので、入部してくれた新入生にやめずに続けてもらう必要がある。だから、むしろ先輩が後輩に気を使っていました。
澤田さんがNTTに入ったのは知っていましたが、会う機会はなかった。久しぶりにビジネスの場で再会したときは、「ひょっとして澤田さん?」という感じでした。スリムだった彼がちょっと太っていたから(笑)。それが7、8年前です。
それから彼が社長になって、提携することで合意しました。日本の通信技術は悪くないんだけどグローバルで評価されていない。日本発で強い製品を出さないとまずいことになるという共通の危機感がありました。
澤田さんが提唱している「IOWN構想」も提携の目的の一つです(IOWNについては、本特集#4『NECと富士通・日立で格差歴然、電電ファミリーの「NTT忠誠度」』を参照)。実現できれば日本発でゲームチェンジを起こすことになる。
――業務提携にとどまらず、出資の受け入れまで踏み込んだ理由はどこにありますか。また電電ファミリー時代に戻るのかという指摘がありますが。