世界最大手のタイヤメーカーであるブリヂストンが変革に向けて動き出した。そのスピードは、業界における他の企業よりもドラスティックで、改革を待ち望んでいた株式市場の想定も上回る可能性がありそうだ。タイヤ業界全体では利益率が低下傾向をたどるリスクがあり、打開策が求められてきた。また、自動車業界では、MaaS(Mobility as a Service)が普及したときに、十分な収益を確保するための具体策を描く企業も限られる。これらの課題にブリヂストンはどう立ち向かうのか。(大和証券シニアアナリスト 坂牧史郎)
タイヤ産業の利益率は高水準?
タイヤ業界の現状を読み解くにあたってまず、下記の図表1の上図では主要タイヤメーカーの簡易EBITDAマージン(=(営業利益+減価償却費)/売上高)の推移をまとめた。2011年以降、タイヤ業界全体で見て、利益率の水準が一段切り上がっていたことがうかがえよう。この背景には、タイヤの価格と主要な原材料である天然ゴム価格のスプレッドが拡大したことが挙げられる。
タイヤは完成車メーカーに販売する新車用と、実際に摩耗したタイヤを買い替える際の市販用に大別される。このうち、日・米のタイヤ市場など、本数ベースで市販用が新車用を上回ることから、図表1の下図では米国の市販用タイヤ価格の消費者物価指数(タイヤCPI)と、最も一般的な天然ゴムの種類であるTSR20の価格をまとめた。この図を見ると、11年ごろを境に、スプレッドが拡大したことが分かる。
では、なぜスプレッドが拡大したのか。筆者の考えは、「偶然、タイミングが合った」である。
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