遺産の「賢い」分け方
遺産の分け方のポイントは次の2つです。
(1) 配偶者が「これからの生活に必要な金額」を相続する
(2) (1)を超えた金額は子どもが相続する
「これからの生活に必要な金額」は判断が難しいかもしれません。まずは「月の生活費30万円×12ヵ月×(平均寿命-現在の年齢)」という式で必要な金額の大枠をつかんでください。
そこから希望するライフスタイルに合わせて金額を調整していきましょう。いざとなれば、子どもたちから資金援助を受けることも可能ですが、「子どもに頼りたくない」と考える親が多いのも事実です。重い病気を患ってしまっても、高額療養費制度があるので、医療費については過度に心配しなくても大丈夫です。
大きな出費となるのは、将来的に施設に入居するときの入居一時金です。最近は「入居一時金0円プラン」を採用している施設も増えましたが、場所によって入居一時金だけで1000万円以上かかる所もあります。このあたりも踏まえて、一次相続の遺産分割を決めることができれば、「将来も安心して生活でき、相続税も安くすむ」という非常に良い形になります。
さらに、一歩進んだ相続税対策の考え方をお話しします。「これからの生活に必要な金額」が固まったら、さらに少し多めに配偶者に相続してもらうことをオススメします。配偶者が多めに相続すれば、その分、一次相続の相続税が減ります(配偶者は1億6000万円まで無税)。
多めに相続した分は、相続した後すぐに、生前贈与の特例や生命保険の非課税枠を活用して、二次相続における相続税の対象から外してしまうのです。二次相続税対策をするための余裕資金をあえて配偶者に相続させることで「一次相続も安く、二次相続も安く」と税金計算上は良いとこどりができるわけです。
配偶者の年齢にもよりますが、もし配偶者がまだ60代であれば、これから20年くらいかけて相続税対策を行うことも可能です。全財産を配偶者が相続し、最終的には相続税が0になるまで、対策するのもよいでしょう。「夫婦間でどのくらい相続するべきか」は、相続税対策の中でも最も影響が大きく、大事な論点です。