税務調査に「選ばれやすい家庭」とは?
皆さんが気になるのは「どのような人が税務調査に選ばれるの?」ということだと思います。税務調査の話をすると、「そんなに大きな財産は無いから、税務調査は心配ありません」と仰る方が大変多いのですが、その考えは危険です。
近年のトレンドとして、「基礎控除を超えるか超えないかギリギリの方で、相続税申告を行わなかった無申告者」に対する税務調査の件数が非常に伸びています。「うちには大した財産もないから」と高をくくってしまった人たちの末路とも言えます。
恐ろしいことに、国は、あなたが大体どのくらいの財産を所有しているか把握しています。
国税庁には、国税総合管理(KSK)システムという巨大なデータベースがあり、全国民の毎年の確定申告(サラリーマンの場合は給与の源泉徴収票)の情報や、過去にどのくらいの遺産を相続したか等の情報が集約されています。
その情報をもとに、「この人はこれくらいの財産を持っているだろう」という理論値を計算します。
税務調査に選ばれるのは、KSKシステムが弾き出した理論値と、実際に申告した遺産額に大きな乖離がある方です。他にも税務調査に選ばれやすい人の特徴があります。それは適用される相続税の最高税率が高い人です。
税務調査に選ばれるのは、どっち?
例えば、遺産1億円、相続人1人(子)の家庭と、遺産2億円、相続人4人(子)という家庭がある場合、どちらのほうが調査に選ばれる可能性が高いと思いますか。財産規模は2億円の家庭のほうが大きいですが、私が調査官なら遺産1億円、相続人1人(子)の家庭を調査します。
その理由は適用される相続税の最高税率にあります。遺産1億円、相続人1人の場合、適用される最高税率は30%。一方で、遺産2億円、相続人4人の場合、適用される最高税率は20%。
この2つの家庭で、仮にそれぞれ1000万円の申告漏れ財産が見つかった場合、最高税率30%なら追徴税額は300万円ですが、20%なら200万円になります。
調査官目線で言えば、同じ労力でも成果が1.5倍も変わるのです。調査官の仕事は、限られた時間とエネルギーの中で、効率よく追徴税を徴収していくことです。適用される最高税率が高い人から優先して調査したほうが、税務署のコストパフォーマンスも向上するというわけです。
ちなみに、調査官に追徴税額のノルマは課されていませんが、年間に行う調査件数にはノルマがあるそうです。しかし、追徴税額のノルマは無いものの、大口で悪質な納税者の取り締まりができたときは、出世に好影響を及ぼすらしく、調査官が重加算税を課税したがっているように感じるときが多々あります。