日本人が米国と世界を理解できないワケ

 私のキャリアは、日本銀行からスタートしました。金融政策部署(営業局=現金融市場局)とプルーデンス部署(考査局=現金融機構局)などで働いた後、野村ホールディングスに転じ、ワシントンやニューヨーク、ロンドンやシンガポール、香港、北京といった世界の金融都市で働き、主に金融や証券などの事業に携わってきました。その後は日本政策投資銀行のほか、ワシントンや北京のシンクタンクや大学で、エコノミストや政治外交アナリストのような仕事をしてきました。現在も米国の政府関係などで仕事をし、世界の政治経済を分析しています。

 私は幸運にも、金融経済業界を軸にしながら、世界の主要都市で幅広い業界の人々と知己を得ました。その中で、私が出会った米国人の多くが共和党員か共和党支持者であったことから、私自身も自然に共和党員に近い考え方で物事を理解するようになりました。

 米国での最初の仕事は、日本銀行で不良債権の処理について、米国のかつての処理策を調べて日本に早期の直接処理を提案することでした。ここで日本と米国の考え方や商慣習の違いについて理解を深めることができました。

 そして米国人の発想方法がより深く理解できるようになるほど、冒頭で触れたように、私の中での違和感が大きく膨らんでいったのです。

 日本に住むみなさんに、世界を動かす人々のリアルな本音と思考方法を伝えたい。

 米国や中国、そして世界の主要国が何を考え、どのようなルールに基づいて政策を決定しているのか。著書『NEW RULES 米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』では、世界を動かす新しいルールがどういったものなのか、みなさんに分かりやすくお伝えしようと試みました。

 願わくは、近視眼的な観点で私の予測を評価するのではなく、大きなうねりの根底に何があるのかというところから見渡せる米国と世界、そして日本の未来をみなさんと共有できれば、これに勝る幸せはありません。

 次回からは米国と中国、そして世界と日本が2021年以降、どのように変わっていくのか予測した内容を、みなさんにお伝えしていきます。